芸能人が抗議する時代の潮目

幼いころから、TVが好き。小学校の低学年の夏休みは、自分が生まれる前のドラマの再放送が夕頃にあり、なんとなく観ていた記憶がある。昼のいわゆるメロドラの濡れ場シーンも、理解できないながら楽しんでもいた。親は共働きで家にいなかったが、寂しくも苦でもなかった。今、テレビ業界も自粛の影響で撮影がストップ。過去のドラマの再編集版を放送している。個人的には「もっと昔の、昭和時代のドラマやればいいのに」などと思ったりするが、ハッと気づく。過去の作品には多分に、現在の価値観では受け入れられないシーンが含まれ、放送するのはリスクが高すぎる。過去の常識が、今はタブーに扱われることは少なくない。また、その逆もしかり。年を取りすぎたと嘆いていても仕方がない。時代の潮目と心得え、受け入れなければと感じる。

多くのタレントや著名人が「#検察庁法改正案に抗議します」とツイッターに投稿したことがニュースになった。芸能人が政治的な発言をするのはタブーだったのではないか?SNSというエクスキューズがあるものの、古い人間にとっては新鮮で驚きの現象だ。同時に現政権に対する潮目を感じた。

安倍政権支持者の反論ツイートは総じて「政治を知らないタレント風情がよく理解していないくせにつぶやくな」というもの。例えば「行政府に属する検察庁の法改正が三権分立を歪めることに繋がらない」という反論があった。その通りだし、自分自身も気づかなかった(ということは、理解していない)点だ。抗議しますツイートをした著名人の中にもそれに気づいていない方もいたかもしれない。だからと言って、影響力がある立場の方が無知にツイートするなという意見は同意できない。知識のないこと、取り違えることがあれば正せばいいだけで、功罪はあるものの、匿名のだれかではなく、著名人が投じる一石だからこそ深まる議論もあるのではないか。

自粛で生活が制限された。興行を生業にしている芸能人の多くが危機感を覚えるのは自然なこと。この非常時に政府が他国並みの補償を行っていれば、著名人の抗議ツイートは起こらなかったかもしれない。現政府が金を出すこと、追加の救済をおこなうことはないだろう。今回の法改正になんら思惑はないとしても、信用されるはずもない。経済的な側面で、これからますます厳しい現状に突入する。現状の政治を変えるには、声を上げるしかない、上げ続けるしかない。リスクをいとわず政治的発言を行う著名人の出現は、この国の政が変わる潮目になるだろうか。今後の政府、政治家の動きに注目したい。

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