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おこがましいの

 豪雨がやってきて、私を責め立てるのです。

「あなたは烏滸がましい」と。

 七月の雨は降りやまないどころか、激しさを増し、排水溝が悲鳴をあげている。私は、角が一つ折れた傘を片手に、横殴りの雨に打たれている。暑い日中とは打って変わって、肌が冷える夏である。
 雨、浸った体でようやく家に帰った私は、よくわからない空いたワインを飲む、しぶさと湿気が交わって胡散臭くなる。散らかった部屋には、空いたチューハイの缶と溜まった吸い殻が紅一点、無論私はタバコを吸わない。
 夢のような夜であった。酒と煙が燻る部屋の片隅で、ぎこちない愛をせめぎ合った。私は容赦をしなかった。いや、加減を知らなかった。あなたは、ただの女であった。それ以上でも、それ以下でもない。刹那的、共時の価値であった。
 しかし、一夜経って、あなたの帰った部屋に私が一人。常でありながら、常ならずの感が絶えない。この場、この空間だけは昨日を記憶している。私だけが置いていかれている。



 拝啓 昨夜の女性

 大変に優しくありがとう。あなたの甘酸っぱい香りが、私をすっかり閉じ込めてしまいました。
 何もいらない、偽物の無頼をそれと見抜いて、それでもなお付き合ってくれたあなたが、脳裏にこびりついて離れてはくれないのです。
 ずるいでしょう。わたしはあなたをずるい女と、そう形容しました。あなたは正直であったと、今になって分かりました。そこも含めてわたしはやはりずるい。
 浮かれていた分帳尻を合わすように、あなたの優しさに託けて、滑稽な男です。
 また会いましょう。笑えるでしょう。まだ私はスカしている。昨日の酒が残っています。あなたの煙が残っています。
 生憎の雨です。あなたが残した足跡は流れて追えないでしょう。この手紙はどこの誰に宛てている。なにもわからない。ただ、つらつらと。
 また会いましょう。もう会えないでしょう。されど、また。

 書いた手紙は途中で捨てた。残ったワインは全て飲み干した。殴る雨は止まない。私だけがおいていかれている。
 烏滸がましいのよ、あなた。

 気狂いの宴には、雨がよく似合う。私は、スカした顔をしながら、ようやく眠りについた。


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