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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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2021年4月の記事一覧

夢の羅針盤

どんなに手をのばしても 届かないと思っていた 遠いなあ、と、ため息をつき だから忘れてしまっていた いくつもの夢 目の前の困難なあれこれに 向き合うことでいっぱいで 夢を追ってはいられなかった けれど心の 深いところの中心に それらはずっと存在していて 消えたり消したり したわけではなかったのです 目の前の困難なあれこれに 強さと弱さを試されて あがいて 破れて 立ち上がって ただ懸命に進んでいるとき 実は 心の深いところで 夢が 羅針盤になっていたのかもしれません

レモンオレンジの透明な空に

飛べるわ――きっと レモンオレンジの光に満ちた 透明な空を見たとき 思ったの 飛べるわ いつか 必ず きっと どこかで―― ◇35年ほど前、高校生のときに書いた詩です。いま読むと、みずみずしいなあ、と思います(笑)。さすがにこういう言葉の使い方はもうしませんが、いまでも美しい空を見ると、「いつか飛べるんじゃないか」「鳥のように自由に飛んでみたい」という気持ちになります。 鳥が巣から飛び去るように、人もその置かれたところから移って行く。 (箴言27:8 聖書新共同訳)  

星空が好き

星空が好きだ ずっとずっと昔から 人びとが寝静まったあとの 凛とした空気 陽は眠り、大気は澄み 空に宇宙が顔を出すとき あれは真空の黒さ? 果てのない、闇? 無数の光がまたたいている 青空より なぜか親しい 宇宙のきらめき 星たちは 何も語らないのに雄弁だ ひとつ、ひとつの孤独な光が 慰めを 優しさを 勇気を 救いを 励ましを 涙を 愛を 降らせてくれる それはそれは清らかに 私のいる地上から はるかな世界の広がりを 垣間見る一瞬 そこにあるのは 恒星、星団、星雲、銀

洗足の木曜日

あの人はひざまずき 私の足を洗ってくださる 荒野や泥の中を歩いて 汚れきった私の足を ほこりや泥 気づかないふりをして 踏みしめた罪 それらにまみれた 私の足を あの人は この世のもっとも低い者のように ひざまずき その手が汚れることも厭わずに 私の足を洗ってくださる 私は悔い もう決して汚れません 美しく生きていきます、と あの人に誓う しかし一歩、野に出れば 私の足は、ふたたび 土とほこりと泥にまみれ 罪を踏みしめてしまうのだ けれども、この足は あの人が洗ってく