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かつて”勇者”だった僕たちへ

2021年10月7日(木)のお昼過ぎ、敬愛する椙山 浩一さんがお亡くなりになられました。
作曲家、”すぎやまこういち”と聞くと、ピンと来る方が多いのではないでしょうか。(まぁ、タイトルの画像が答えを物語っているのですけども。)

そうです。
ドラゴンクエストシリーズの作曲家の生みの親です。
そして人は彼を、”ゲーム音楽の父”と呼びます。

僕はドラゴンクエストの『序曲』という曲が、この世界のゲームミュージックで一番大好きなのです。そして、何よりドラゴンクエストシリーズが大好きなのです。何十時間、何百時間もプレイをし、そして何百回、何千回と『序曲』を聴き、その度に心が震えました。

大好きな曲、そして大好きなドラゴンクエスト。
僕はずっと、”勇者”でした。

ドラゴンクエストとの出会い

僕が初めてドラゴンクエストと出会ったのは、小学生の低学年の時です。
昔からゲームが大好きで、親もそこまで厳しく取り締まらなかったものですから、色んなハードでゲームをしていました。
当時は主にゲームボーイアドバンス、ゲームキューブ、ゲームボーイSPをしていました。

そこに、幼馴染の沙耶ちゃんと幸星君が、とある日PlayStation2を持って家に遊びに来ました。(勝手に名前使ってます、ありがとう!!)
当時の僕からすると「何だこの黒い箱は、大人だ...!!」と感動したものです。幸星くんは僕の2つ上で、「PlayStationは大人がやるゲームなんだな」と思ったのを覚えています。

PlayStation独特の起動音から、ソフトの読み込み、そしてディスクが起動。突如始まる、壮大で、心を震わせるOPと音楽。

そう、2004年頃。
当時日本を流行の渦に巻き込んだ、「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」です。

世界観も、音楽も、今までやってきたゲームとは一線を画す感動。
それが、初めて僕がドラゴンクエストに触れた瞬間でした。
そして、僕が初めて”勇者”になった瞬間でした。

『序曲』にハマる

当時、主にゲームというのはポケモンやカービィ、マリオの様に平面で繰り広げられるものが多かった様に記憶しています。
そんな中で、今で言うオープンワールド(と言っても擬似的なものですが)の世界は衝撃で、グラフィックも普段のゲームの数倍綺麗で、子供の僕にはまるで現実の様に映りました。

(ここからはドラクエを知らない人を若干というか結構置いていきます)
その場で頼んでデータを作らせてもらい、トーポになり、スライムと闘い、初期で洞窟に向かう細道でガイコツ剣士にボコボコにされました。
体力や呪文の仕様も理解せず、操作やストーリーもままならず、ただただ手探りで出来る事を進めていく感覚、あの時僕は、まぎれもない”勇者”でした。

そして、すぐ母親に頼み、ドラゴンクエストの楽譜を買ってもらい、ピアノで練習し出しました。
ピアノの発表会も、皆がトルコ行進曲やきらきら星を弾く中、1人悠々とドラゴンクエストを弾いたのを覚えています。

そして、僕が初めて友人、人前でピアノを弾いたのも『序曲』でした。
小学校中学年の昼休み、クラスにピアノが回ってくる音楽週間があり、(恥ずかしいな)(でも皆知ってるもんな)と思い、『序曲』を弾いたところ、当時対して仲良くなかった女の子が「何これ!カッコいい!!聴いた事ある!!」と駆け寄ってくれました。
僕の大好きなドラゴンクエスト、そして『序曲』が褒められた事は、まるで自分が褒められたかの様に嬉しかったです。

そうして、僕は完全に、ドラゴンクエストの沼にハマります。

ぼくとドラゴンクエストのこれまで

そこから今日に至るまで、僕はドラゴンクエストのシリーズを網羅しました。

ナンバリングタイトルで言うと、
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(リメイク版)
『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』は勿論、
『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』
『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』

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何より僕が大好きだったのは、モンスターズシリーズです。

『ドラゴンクエスト ジョーカー』
『ドラゴンクエスト ジョーカー 2』
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2 プロフェッショナル』
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3』
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3 プロフェッショナル』。

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そして、本編とストーリーが少し繋がっている、テリーシリーズ。
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D』
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドSP』
『ドラゴンクエストモンスターズ2 イルとルカの不思議な鍵SP』。

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そして勿論のこと、代表的なモンスター、スライムにスポットを当てた
『スライムもりもりドラゴンクエスト2 大戦車としっぽ団』
『スライムもりもりドラゴンクエスト3 大海賊としっぽ団』

(懐かしい...泣)

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他には、『いただきストリートDS』もやりましたね。
トレーディングカードゲームの『ドラゴンクエスト モンスターバトルロードシリーズ』もゲームセンターに通い詰めていました。
100円を入れるとカードが出てきて、パーティを組んで闘うという、ムシキング的なアレです。
(当時まあまあなレアだった”うごく石像”が出た時、泣いて喜びましたねぇ)
勿論、最新の『ドラゴンクエスト ウォーク』『ドラゴンクエスト タクト』もやっていました。
特にウォークのあのプロモーションムービーは、日本中のかつて勇者だった人の心を揺らしたのではないでしょうか。
僕たちが大好きなモンスター達が日本中を駆け回る。
ド派手で、自然と普段の景色にモンスターが溶け込んでいる。涙腺がゆるみましたね。

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(当時海外旅行中にリリースされ、日本に帰ってきて空港のWi-Fiで急いでダウンロードしたことを覚えています。笑)

そして、個人的に僕がドラゴンクエスト史上、一番嬉しかったこと。
それは、こちらも大好きで大好きでやまない『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』に勇者の参戦が決まったところ。
暗雲立ち込め、闇の深林の中戦うリンクVSメタナイト&マルス、ここまでか、という瞬間に白馬に乗ったイレブン仕様の勇者が一閃、ロトの剣を振り払い、足元が照らされ、そして、そして、『序曲』のあのイントロ。

世界一好きな対人ゲームの『スマブラ』(プレイ時間1000時間以上)。
世界一好きなソロゲームの『ドラクエ』(同じく総計1000時間以上)。

当時、23時からのニンテンドーダイレクトをその頃付き合ってた恋人の家で観て、声をあげて号泣した事を覚えています。
「こんなに嬉しい事があるか」「こんなにワクワクする事があるか」と。
最高の瞬間でした。ああ、思い出しただけで泣きそう。
リリースされて、最速でVIPにぶち込みました。笑

この23年間。
小学生で、『ドラゴンクエストVlll 空と海と大地と呪われし姫君』と出会い、
十数年間、計19作のドラクエシリーズをやり込み、
そして大人になった今、『ドラゴンクエストXll 選ばれし運命の炎』がやってくる。

これまでの人生、いつでもドラゴンクエストが近くにあり、そして、『序曲』があった。
僕たちはずっと”勇者”で、『序曲』と共に冒険をした。

そして、すぎやまこういちさんが、旅立たれた。
彼の創るドラゴンクエストの音楽を聴けるのは『ドラゴンクエストXll 選ばれし運命の炎』が最後になる。

だからこそ。

とまあ、思い出を振り返りながら色々書いたのですが、正直すっごくショックで。本当に大好きで大好きな作曲家で。
新しいタイトルがが出る度、真っ先に新しく編曲された『序曲』を聴き、感動して、心を震わせ、思い返す様に過去Ver.も聴いて、を繰り返して。

昼過ぎ、仕事中に訃報を聴き、正直午後はずっとぼーっとしてしまいました。あんまり手につかなかったんですよね。
もう二度と彼の音楽を聴けない。
ちょっとこれは感覚的な話なのですが、大好きでやまない『序曲』を聴く度、追悼の気持ちになっちゃうんです。『遺作』といいますか。
わくわくする一方、ちょっぴり寂しくなる。
その事実も悲しい。

ただ純粋に、純粋に、大好きなドラゴンクエストが、少し寂しいものになる。
新しい作曲家がついても、どうしても懐疑的な目を向けてしまう。
その事実が悲しい。

そしてこの感情はまだきちんと整理できていない。
「すぎやまさんはそんなこと求めていない」
「彼を失ったとて、彼の音楽が変わる訳ではない」
そんな正論や理想論じゃ片付かない、喪失感。
涙は出ないが、心に穴が空いた。これまでの思い出が燻んだ。
そんな感覚。

ただ、これもひとつの物語なのかな、と、思う。

僕たちはこれからも”勇者”だから

本当はここまでで筆を止めようと思っていたのですが、書きながら、じわじわと新しい考え方が芽生えました。
これまで、ドラゴンクエストで”勇者”だった僕たちは、きっとこれからも”勇者”だと思う。

物語の中で沢山の別れを経験し、それでもストーリーを前に進めた勇者達、それと同じなのでは、と思う。
呆然と立ち止まっても世界は変わらず、何も変わらず。

新作も、来る。
そこでの音楽は、すぎやまさんの最後の作品になるそうだ。
そして、"Xll"が終わっても、きっと数年後、また"Xlll"が来る。
新しい勇者と、新しい『序曲』と共に。

今日は、沢山の”勇者”だった頃の思い出を振り返りながら、いつもよりちょっぴり寂しい『序曲』を聴いて、眠ろうと思う。
いつかまた、”勇者”になる時に思いを馳せながら。

椙山 浩一さんが安らかな眠りにつかれますよう、心よりお祈りします。

fin





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