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BPaaSとは?BpaaSのニーズと今後について考えてみました

BPaasはあまり馴染みのない言葉ですが、2012年に外資系のコンサルティング会社が命名したビジネスモデルです。BPaasは、BPOとSaaSの造語であり、クラウド活用を前提とした業務をアウトソース(外注)することになります。

とはいえ、一般的なBPOと何が違うのか、SaaSの一機能として開発すれば良いのではないか、SaaS+アウトソースでコストが高くなるのではないか、など疑問が浮かぶのではないでしょうか。

B2Bの界隈では、SaaS事業の盛り上がりが落ち着き始め、SaaSの次の在り方として、業務改革の新たな在り方としてBPaaSが着目されつつあります。

そんなBPaasの特徴や、SaaSやBPOとの違い、今後の事業チャンスについて書いていきたいと思います。

余談ですが、BPaasについては、ちょうど去年の今頃、大きな可能性を感じておりましたので、本質の理解は大きく間違ってないのではないかと自負しています。それでは解説していきます。


BPaaSの起源

BPaaSは、BPO+SaaSの事業モデルであり、前者は人月単価で稼ぐサービス、後者はシステム利用料で稼ぐソフトウェアサービスになります。

BPaaSは、一見、新しい造語のように思えますが、2012年頃に外資系コンサルティングファームが提唱したビジネスモデルになるので、実は10年前に提唱されている考え方です。

SaaS事業が流行した際は、SaaS+コンサルティング事業モデルは資本市場において評価を受けにくかったですが、今となっては、SaaS+コンサルティングのサービス提供でなければ、SaaS事業単体での成長が難しくなってきている印象を受けます。

特にバーティカル市場向においては、ARPAや顧客単価の向上にはアップセル・クロスセルが必須ですが、バーティカル市場の特性上、属人的な業務課題なほど、汎用的な機能を開発することはできず、アップセル・クロスセルはコンサルティングやサポートなどの人月単価の提供が必要になってきます。

資本市場における評価も、アクセンチュアやベイカレントなどのコンサルティング会社が連続成長したり、新たなコンサルティング会社が上場したりと、コンサルティングサービスの評価が一段と高くなっているのも事実としてあり、SaaS+BPOのニーズが高まっています。

また、アメリカではビジネスアナリストという、企業のデジタル推進を行うための戦略設計〜デジタルツールの導入および業務プロセスの改善の責任を担う職種が人気です。

BPaaSやビジネスアナリストにある共通の背景には、1980年代に流行した分業体制から進化した、"リエンジニアリング"の概念が強くあるのではと思います。

リエンジニアリングは、業務を抜本的に見直し改革を行うことであり、単なる分業によるアウトソースではありません。経営の重要なコア業務や機能(KFS)を見定めて、コア業務の最大化を中心とた業務設計を構築することになります。

クラウド利用を前提に事業に必要な業務プロセスを見直すことこそが、BPaaSの価値になりうると思います。 

BPOがもたらす便益

BPOは、一言で説明すると分業制です。家政婦を雇ったり、電化製品の修理をお願いしたり、銀行にお金を預けて投資をしたり、エンジニアに開発をお願いしたり、人事部に採用をお願いしたりなど、専門性が必要な業務を専門性がある人間に行ってもらうことで、最低限の工数で最低限の結果を求めることになります。

この分業制に強いのが製造業であり、かつての世界のトヨタであります。

しかし、インターネット技術の発展により、技術革新と情報流通が加速し、規模の経済を生かした生産コストの生産技術が同質化、生産ノウハウも人材流動によって同質化することで、より安く作るために、オフショア開発や作業員の外国人化が進んできました。

ノンコア業務(事業の価値創造とは間接的な機能業務)を外注し、固定費コストではなく変動費コストに変えていきます。コスト削減を行い、利質(利益の質)の改善を行うことで、収益性を向上し、資本収益率を高くしていくことが、BPOのメリットでしょう。

事業のバリューチェーン上の課題を自社の人員リソースで解決するには、時間コストと金銭コストが、長く多く発生します。しかし、アウトソースをフル活用すれば、ビジネス機能の範囲を拡張することで、事業機会(収益機会)を拡大でき、資本収益率の改善を行えるようになります。

協業や資本業務提携もBPOの考え方が根本にあると考えます。

資本利益率は、売上を上げて全体の利益率を高くするか、コストを最大限削減し、利益率を高くするか、この二策に分かれますが、BPOはどちらにも効力が働きます。

そうすることで、市場や顧客への付加価値(=コア業務)を図太くすることに集中する事が可能になります。これらがBPOの特徴になります。

BPaaSの便益とは

それではBPaaSの便益とは一体なんでしょうか。冒頭にも触れましたが、"クラウド利用を前提に"と書きましたが、ソフトウェア外で行っていた業務をソフトウェア内で行うことを前提として、完結できない業務をソフトウェア内でアウトソースできることです。

これによって、BPOでは蓄積されなかった業務ノウハウや業務プロセスのデータがクラウドに蓄積されていきます。また、クラウド前提なのでAPI連携によって他社プロダクトやサービスにユーザーが接続でき、業務解決を1プロダクト上で解決できる様になるのではないでしょうか。

上記の図の様に、機能が複雑になるほどSaaS機能だけでは解消できず、他プロダクトとの連携やカスタマイズ開発が必要になりますが、複雑な要件を解消できる1プロダクトのサービスになれれば、他社へのスイッチングコストは大きくなり、参入障壁へと繋がるのではないでしょうか。

ちなみに、この1プロダクトで課題を解決できる需要の流れは、別の業界でも起きています。例えば、LINEやWechatなどの様なチャット機能から始まり、今は決済インフラとなったスーパーアプリ、フリマアプリだったメルカリが今は決済やクレカ機能などのスーパーアプリ化、chatworkのチャット機能を軸としたスーパーアプリ化など、B2CでもB2Bでもこの不可逆な流れが来ています。

また、AdobeによるFigmaの買収も同様の現象と捉えることができ、カテゴリーキラーとして存在していたプロダクトが1つに集約されていく現象が至る業界で起きています。

それの直近のブームがNotionであり、Google Document,スプレッドシート,スライドのスーパーアプリ化といった感じでしょうか。

リクルートの出木場さんによる「落ちるところに落ちていく」とはまさにこのことなんだと…

BPaaSのニーズが生じる構造

BPOとBPaaSの便益をふまえて、BPaaSのニーズが生じる構造を考えてみまMした。

・間接業務のコストが高い

間接コストは企業の競争優位の源泉となる機能と直接的に関係しない業務にあたります。間接コストが高い業務のアウトソースを仕組み(マッチング)で提供しているのがラクスルです。

印刷会社では多重構造によって非効率な受注構造になっており、印刷業務の集約ができず、1印刷に発生するコストが重んでいたところを、マッチングにより1印刷にかかるコストを集約でき、印刷に係る間接コストを削減しています。

ラクスルのように、間接コストが高く発生している原因である多重構造業界では、コストを削減しつつ、ノウハウを自社で蓄積することで、多重構造ならではの無駄な企業間取引の削減につながるでしょう。


・業務の属人性が高くシステム化(=ルール化)できない

専門的な資格が必要な職種では、業務の属人性が高くシステム化して汎用化の難易度が高いです。

バーティカルSaaSの特性として専門業界=専門職種が多い業界でのプロダクトが傾向としてありましたが、今後はより深い機能を持たせるために、SaaSに加えてBPOサービスを提供していくことになります。

BPaasに近い概念で事業展開している会社

・リテイギ
SaaS,BPOモデルに振り切った事業開発会社。産業のあり方を抜本的に見直して再定義する概念。

・クロスオペレーショングループ
SaaS*コンサルモデルで運用していたオペレーションのノウハウをSaaSに変換し、オペレーションをリデザインしていく概念

・ラクスル
間接コストの削減を軸にした仕組み(オペレーション)の改善ではなく改革(リオペレーション)していく概念

・アクセンチュア
コンサルを軸に、クラウド導入+業務アウトソースの最強事業体。

・SMS
オペレーション(仕組み)ハックをベースに、人材紹介やSaaS事業を軸に展開。オペレーションハックの概念

・Blue Print
産業特化型プロダクトのスタートアップ量産事業会社。日本ではあまり見受けられない形態だが、立ち上げた事業を早期で売却(イグジット)し、次の事業を連続的に開発する、ファンド+事業会社の融合体のような組織。誰も気づいていない特定産業のペインをプロダクトで解決していく概念。

BPaaSの今後

大きく3つの方向に分岐するのではないかと考えています。

1つは、特定産業向けプロダクトにおいて、機能実現できない個別具体な機能を、人月単価のコンサルティングあるいは稼働リソース(他社サービス・機能)を提供するモデル

2つは、業務基盤プラットフォームとしてノーコードERPをベースとした、企業カスタマイズが可能な開発基盤を要し、Sier的なサポート・サービスで人月単価を提供するモデル

3つは、前者2つとはやや違う切り口ですが、特定産業向けにコンサルティングや人材紹介などの経営基盤サービスを展開している企業が、業務コンサルティング〜SaaS選定〜導入補助まで請け負うBPO(DXコンサルティング)モデル

1つ目は、建設業界SaaS「ANDPAD」、製造業SaaS「Caddi」の様なSaaS
2つ目は、「Tailor Platform」の様な業務基盤プラットフォーム
3つ目は、「じげん」の様な特定産業向けの人材紹介事業

今後、こういったBPaaSニーズが高くなりそうな市場の見つけ方として、業界の売上成長率が微増/成長&EV/EBIDAが高い&労働生産性が低いを軸にして業界を比較してみると、ニーズがありそうな業界を絞れるのではないでしょうか。

以上になります。ありがとうございました!


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