建築を歩く #1──霞が関|新建築マップ連動企画
新建築.ONLINE編集部
新建築マップを手に街を歩き、建築を見つめる本企画。初回のスタート地点には、新建築社がオフィスを構える「霞が関ビルディング」を選びました。地下鉄虎ノ門駅に直結する利便性の高さに伴って、周囲を散策する機会はあまりなく、せっかくならば新建築マップを使って周囲の風景や建築を体感し、街のイメージをとらえ直してみようという意企です。
中央省庁が集まる日本の中心地、霞が関。その象徴ともいえる「霞が関ビルディング」は、1968年に竣工した日本初の超高層ビルです。「大都市における人間性の回復」を謳い、敷地面積の70%以上が広場として確保されています。地下鉄駅と繋がる南側広場は、日夜多くのビジネスマンが行き交い、またお昼時にはファニチャーでくつろぐ人でにぎわっています。
ビルを通過し北側に出れば、先ほどの喧騒とはうって変わり、並木の並ぶ落ち着いた様相が感じられます。道路対面には「新霞が関ビルディング」(『新建築』8705)が建ち、そのまま三年坂を登って六本木通りへ歩みを進めれば、都市軸に沿って150度湾曲させたファサードが眼前に迫ります。
六本木通りは直下に首都高が貫通し、緩やかに傾斜しており、歩いていて飽きません。「新霞が関ビルディング」沿いには大通りから分岐する脇道があり、そこを下ると、木漏れ日の注ぐ公開空地が見つかりました。人気や交通の少ない、都市のアジールとも言える静かな空間です。お昼はビル地下の飲食店で舌鼓を打つのも一興ですが、ここでひとり心をリフレッシュするのも良さそうです。
六本木通りへ戻り、傾斜を下るように交差点に突き当たれば、その名の通りル・コルビュジエのロンシャンの教会(ノートルダム・デュオー礼拝堂)の彫塑的な外形を思わせる「HOMAGE to Notre-Dame-du-Haut」(現NBF赤坂山王スクエア、『新建築』9003)が現れます。
新建築マップによれば、その対面には「フランス国立インドスエズ銀行」(『新建築』8602)があるはずですが、現在は別のオフィスビルへと建て変わっていました。
交差点から東、「霞が関ビルディング」方面へ歩みを戻せば、ビルの合間に「虎ノ門ヒルズ」のビル群が姿を見せます。
高層ビルが林立する風景に、日本の政治・経済を支える都市基盤の力強さを思いつつ、足元に目を向ければ、高低差のある地形の広がりと、その地形と建築のリズムが生み出す多様な空間の存在に気付きます。官庁街・霞が関に、密かに息づく人間的なスケールに魅了された散策でした。
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