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#野生の月評

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「月評」スピンオフ企画。新建築社刊行の雑誌『新建築』『住宅特集』などの掲載作品・論文にまつわる感想などの記事をまとめていきます。「#野生の月評」とつけてご投稿いただけると嬉しいで… もっと読む
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2018年12月の記事一覧

竹林寺納骨堂を訪れて

text by シマダ 今回は、去年高知に見に行った竹林寺のはなしをします。 仕事終わりに夜行バスに飛び乗り、竹林寺に向かいました。 本堂のすぐ脇に小道があり、森の中に入っていくとひっそりと佇む納骨堂が見てきます。 入り口に段差をつけることで、建築を低く抑え森の中で主張しすぎないボリュームになっていました。 僕がこの建築で一番驚いたのが、玄関ポーチ空間です。12本ある柱が全て柾目がファサードに向くように建てられ、通路側には、板目が向くように構成されていました。もちろ

軍隊経験と建築家|菊竹清訓と清家清、それぞれの戦後民主社会な「格納庫」

新建築主催「12坪木造国民住宅」コンペで佳作に選ばれた菊竹清訓案(新建築1948.4)と、清家清の建築家デビュー作となる「うさぎ幼稚園」(竣工1949、新建築1950.4)(図1)。特徴的なシェル形の建築は、ともにそれぞれの戦時中の軍隊経験に由来しています。 図1 ふたつのシェル型屋根建築 敗戦を境にして、民主的変革を遂げたといわれる日本社会。でも、そんな社会の建設を担った若き建築家たちは、やはりそれぞれに戦争を体験し、自らもその技術・技能でもって「一億総火の玉」の一端を

みんなが見る建築(論)の姿─「野生の月評」を紹介,その1!

今年の6月よりスタートした「野生の月評」. 『新建築』『住宅特集』などに掲載された建築プロジェクトに触れた,皆様の投稿を『#野生の月評』マガジンにpickしていっています. 誌面上の紹介だけでは伝えきれなかった建築の魅力,雑誌自体の感想などそれぞれの投稿からは学ぶことばかりです. pick数も40を超え,量が増えてきましたので,イントロダクション記事として,それぞれの投稿が,どのプロジェクト・論考,雑誌に触れているかを紹介する記事を順次投稿していこうと思います. 本記事

街のなかの「とのまビル」

・20年ほど前 ずいぶん前になってしまいましたが、見せていただいた「とのまビル」の感想です。 まずは昔、20年ほど前の話になるのですが、私が市大生活科学部の学生のころ、工学部の授業に参加させていただいたときのことを思い出しました。当時、市大工学部建築学科には難波和彦先生がいらっしゃって、設計製図を「コンバージョン」をテーマにしてられていました。今にして思えばずいぶん先進的な課題だったなと思います。私が参加させてもらったのは、確か「オフィスのコンバージョン」で、大阪市のオフィス

建築の批評について

・98年の2つの文章 『批評の在り所 建築の論点』というテーマにおいて、私は過去の住宅特集から2つの文章を踏まえたい。まず、伊東豊雄さんの「批評性のない住宅は可能かー脱近代的身体論ー」[jt9809]。伊東さんはここで批評性の定義をしている。設計者と施主、役所、社会との間に埋めがたい断絶があるときそこに「批評性」があると。しかし同じ文章のなかで「批評的である」ときの相手に向けるネガティブな視線に疑問を呈する。現状を否定し乗り越えようとする姿勢はそのままに、「人々の信頼というも