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(前編)11月7日 銀杏BOYZツアー2018『GOD SAVES THE わーるど』@Zepp DiverCity

今日はどうなるんだろうか……僕は数分おきに、何度もスマホの電源を入れて時間を確認した。そう簡単に時が進まないことはわかっているけど、どうしたってソワソワしてしまう。“銀杏BOYZとtetoが2マンをする”これが落ち着いていられるか——。

2018年11月7日、銀杏BOYZのツアー『GOD SAVES THE わーるど』が初日を迎えた。このツアーは対バン形式で名古屋はBiSH、大阪は台風クラブ、そして東京はtetoが選ばれた。

18時30分、会場が真っ暗になる。すると吉田拓郎「人生を語らず」のSEに導かれて山崎陸、福田裕介、佐藤健一郎、小池貞利が姿を現した。静かでひっそりとした会場。スポットライトが小池1人を照らす中、小池はエレキギターを片手に「光るまち」を弾き語りで歌い始めた。

悪ガキにはなれない並ガキな君の口癖はただ「眩しい」だった
そつなくこなす、嘘付くことない君の背中を追うのが好きだった
愛想笑いが苦手な君の愛想笑いを見るのが好きだった
愛想笑いもする機会のない僕の心のスーパーヒーローさ

そして、山崎、佐藤、福田が思いっきり腕を振り下ろす。
<光るまちに行こう 光るまちに行こう>
その時、スポットライトがステージ全体を照らし、強烈な音が鳴った。今、tetoのライヴは始まったのだ。

全員が一心不乱に演奏をする。そもそも、tetoのライヴは激しいパフォーマンスだけど、そうじゃない。すごく狂気じみていてヒリヒリした。1曲目から7分にもおよぶ大曲を披露した後、小池が「ここ、お台場を照らす!馬鹿みたいに照らす!『高層ビルと人工衛星』」と言ってさらに激しさが増した。いつも冷静な佐藤が狂ったようにベースをかき鳴らして、小池は何度も客席へダイブしている。以前、インタビューをした時に小池は「俺ははじめて『高層ビルと人工衛星』をつくって、健ちゃん(佐藤)に聴かせたら“すごいっすね!”と言ってもらえて。俺もその時に“結構イケるな”と思っちゃったんですよ」と言っていた。あの時の感触が嘘じゃなかったと、今、約2500人の観客を前に証明している。2人はどんな気分でこの曲を歌っていたんだろう。

「トリーバーチの靴」「溶けた銃口」を披露して、小池が静かに口を開く。「……銀杏BOYZはずっと作品が素晴らしくて、姿勢も素晴らしくて。あの時代に、あの1stアルバムを産み落としただけでもバンドをやらなくても良いぐらいの、偉大な功績を残したと僕は思います。 “全盛期で解散すれば良かったのに”って言う奴はいると思うんですよ。でも、そんなことをありえなくて。続けているだけでカッコイイと思います。……ただ、9年もアルバムを出さないのはやり過ぎだと思うんです!さすがにな!だけど……もし、この先にアルバムを出さなかったとしても良いです。俺は銀杏BOYZの音楽を忘れないから」そう言って「忘れた」を演奏。

——GOINGSEADYが解散したのは2003年、僕は中学3年生だった。すでにゴイステにハマっていて、CDはもちろん、インタビュー本、ラジオ、ライブ映像など手に入るものはとにかく集めた。その後、すぐに銀杏BOYZが結成されて2005年に1stアルバムがリリース。やはり僕は夢中になった。とにかく時間とお金は銀杏BOYZにつぎ込んだ。そして今、僕が同じように時間とお金をかけて追いかけているのがtetoである。ステージの上ではtetoの4人が歌っている。

何年経とうたって寿命がいつ来たって
忘れはしたくないなって
そう思って今日を生きていたいんだ

僕はこの日を忘れない。いや、忘れたとしたら素敵なことかもしれない。そう思ってライブを観ていた。計7曲を歌い終えて、ステージから消えていく小池、佐藤、福田。「あれ、山崎は?」と思って目をやると、おもむろに洋服を全て脱ぎ捨てて全裸になり、何も言わずに袖へ歩いて行った。動揺と笑いが起きる会場。ステージの中央には抜け殻のようになった、山崎の洋服が残っていた。話してみると山崎自身はすごい常識人だし、目立ちたがり屋とかでは決してない。だからこそ……すげえ良い去り際だった。

TEXT&PHOTO:真貝聡

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