いづみせんせい
通っていた小学校と通りを挟んだ向いに、私が通うはずだった同市の中学校があった。
私は受験を始めるには遅すぎる頃になり、唐突にそこには行きたくない、私立に行きたい、と親に進言。
行きたいところに行けと受験は許可され、集団は向いていないだろうから個別指導の塾にしようかとなり、大学生のアルバイターが勉強を教えてくれる塾に入ることになった。
私は、人見知りで済ましていいのか分からないほどぶっきらぼうで、何を聞かれても頷くだけで「はい」も言わない。
問題を解き終わっても、私からは話しかけず、先生から終わった?と聞かれて、うんと頷くだけ。
分からないところがあっても、何がどう分からないかを先生に聞くこともなく一人でずっとその問題を見ている、という感じで、自分から学びに来ているのに、ずっと受け身な生徒だった。
先生一人に対して生徒が二人つく体制で、隣の席の子がすごい喋る子で、先生と友達みたいに話しているのを見ていいなあとは思っていた。
私がずっとこんな感じでも、先生は面倒くさがることもなく、いつも一生懸命教えてくれていた。
その先生に自分と同い年の弟がいると知り、こんなお姉ちゃんいたらいいのになあと思うくらいには私は先生のことを気に入っていた。
でもそれは先生に全然伝わっていなかった(苦笑)。
夏くらいには、接する時間が増えそれなりに会話をするようにはなったけど、自分は隣の子みたいに可愛くないし、きっと気を遣われているだけだろうし、自分からあまり先生に話しかけるのもよくないよね、と自分を卑下し勝手に線を引いた。
傘を忘れ駅から濡れながら歩いて教室に入った時は、そのまま授業を受けていたけど、濡れてるし雨臭いかもしれないと思って出来るだけ先生から机を離し壁にくっついていた。
「あいしちゃん私のこと嫌いだよね。そんな机離すほど嫌なの?」と先生が悲しそうな顔で言ってきた。
(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
違うんです先生...
先生に嫌われたくなくてあまり話しかけないようにしていたし、嫌われたくなくて机を離していたのに、自分が先生を嫌いだと思われてしまった。
その時は首を横に振ってみたけど、机を離した理由は先生に伝わらなかっただろうな。
それからも先生は普通に優しくしてくれて、受験日が近づいた時もわざわざ遠くの学業成就のうたわれる神社に行ってお守りを買ってきてくれた。
私が第一志望にしていた学校は、その先生の母校でもあり、私が進学したら、ちょうどその年から教育実習(数学)に行くからまた会えるね、と。
まあ普通に落ちたのだけど。
その学校に行くこともなく、教育実習で先生と再会することもできず、先生のこと嫌いだなんて思ったことないですよと言うこともできず、今に至る。
自分の思ってることを口に出せず、ごめんなさい。
先生がくれた御守りはまだ持っています。
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