Withコロナは、なぜ不況への道なのか。
いま日本政府が行っている、コロナとの共存を前提とした経済振興策は、かえって不況をもたらしかねません。理由を説明しましょう。
ヨーロッパの中では比較的コロナ被害が軽微だった北欧で、スウェーデンだけがけた外れの犠牲者を出してしまいました。人口当たりで、他の北欧諸国の5倍から10倍からの人が亡くなってしまったのです。スウェーデンはいわゆるロックダウンをせず、人々の自発的な感染対策(つまり、日本でも最近やたら政治家たちが唱えている、自衛!)にまかせていたからです。
しかもスウェーデンは、経済的ダメージを抑えることもできなさそうです。
欧州委員会は、スウェーデン経済は今年5.3%縮小すると予測しました。この数値は他の北欧諸国のうちデンマークとノルウェーより悪く、最下位のフィンランドより多少ましなだけです。
なぜスウェーデンはロックダウンをしなかったにもかかわらず、経済に打撃を受けてしまったのでしょうか。
ご存知の方も多いでしょうが、日本では、緊急事態宣言の少し前から人々が行動を自粛しはじめ、新規感染者の増加ペースは下落していました。
まったくおなじ行動パターンが、他の国でも観測されています。たとえばアメリカでは、なんとすべての州で、外出禁止令が実施される前から、家にこもる人の数が急増していました。
Americans Didn’t Wait For Their Governors To Tell Them To Stay Home Because Of COVID-19
このグラフはアメリカで家にこもっていた人数を各州ごとに示したもので、縦に引いてある点線は、外出禁止令が出た時期を表しています。
またフィナンシャルタイムズのJohn Burn-Murdoch氏は、ツイッターでこのグラフに触れて、イギリスでも同じ現象がみられると述べ、ロックダウン前後のイギリス人の行動量を表したグラフを提示しています。やはりロックダウン以前に、人々の行動量は劇的に低下していますね。
つまりコロナの蔓延が起こると、人々は政府に命じられなくとも、感染を警戒して行動をあるていど自粛します。高齢者や持病のある人にとっては、コロナの重症化率・致死率はバカになりません。また若く健康な人でも、家族や知人に高齢者・ハイリスク群がいれば、彼らにうつしてしまうことを恐れるでしょう。そんな危険を冒してまで外を出歩きたくない、という人はそれなりにいるわけです。
アメリカとスウェーデンの経済学者たちが、こうした事実を前提に、アメリカで、感染拡大を抑制できないまま行動制限をすべて解除したらどうなるか、シミュレーションを行いました。
英語で50ページ近くもある論文なので、私も序文と結論を、機械翻訳を利用してざっと読んだだけですが、次のようなことが述べられています。
行動制限を解除しても、人々はウイルスへの警戒から行動を委縮させるので、経済は完全には回復しない。しかし人々の自粛だけではコロナの感染を抑えきるには足りないので、ワクチンや特効薬の登場・集団免疫の達成などがあるまで流行は続く。そのあいだ、経済は停滞しつづける。
これが、スウェーデンで起きたことなのではないでしょうか。
ちなみにアメリカは、一時期反ロックダウンデモやBLMデモで大騒ぎしていましたが、自粛効果は消えていません。早すぎるロックダウン解除の結果、蔓延が再開した地域では、経済活動が縮小しはじめました。
このように、むりやり経済を回そうとして感染の制御に失敗すれば、むしろ経済停滞からいつまでも逃れられません。日本で最近唱えられている、多少の感染者の増加は許容しつつ経済を回そうという考えは、絵に描いた餅にすぎないのです。
いまは積極的な検査、県をまたいだ移動の制限、休業要請などなど、使える限りの手を使って感染抑制に力を注ぐべきです。再度の緊急事態宣言も視野に入れておくべきでしょう。感染拡大を止められなければ、それ以上の経済ダメージを受けかねないのですから。
むりやり経済を回そうとしたアメリカやスウェーデンが厳しい状況に追いこまれている一方、徹底したロックダウンでコロナ封じこめに成功したベトナムでは、経済成長が始まっているそうです。
【2020年版】ベトナム経済の最新状況 | 驚異のGDP成長率+2.8%は〝脱コロナ〟の証明か?
日本はこれから、どちらの道を選ぶのでしょうか?