河村市長そりゃないぜ―愛知・名古屋の新型コロナ対策と、大村知事リコール騒動②

大村知事のコロナ対策

大村愛知県知事は、この状況を打破するため、検査能力の拡充と病床・療養施設の確保、検査技師や医療従事者の増員に動きました。3月11日には、検査増強の方針を公表しています。

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ところが、当時国内では、検査を増やすとかえってよくない、という議論がひろまっていました。そのため、検査増強を発表した大村知事も、インターネットでバッシングを受けてしまったのです。

大村知事を批判した人々は、おもに病床不足を避けるために検査を減らすべきだと主張していたようです。コロナ感染者のうち重症者は2割程度で、他の無症者・軽症者は命に別条ありません。ですから、この重症2割だけを診断して入院させ、あとの8割は診断せずにおけば、病床不足の危険を犯さずにすむというのです。

またこの時期には、韓国やイタリアは検査を積極的に行ったせいで病床をパンクさせ、犠牲者を増やしてしまったといううわさも飛び交っていました。どうやらデマだったようですが……。

ここに乗りこんできたのが、おもにあいトリの件で大村氏を以前から批判していた、高須克弥氏でした。

高須氏の参入で、バッシングはさらに加速したようです。

「『高須先生を支持。院内感染でウイルスが広がっていく可能性が高い』『治療法が確立されていない現在、やみくもに検査を行うことは不安を煽る。まして、愛知ではコロナウイルスを撒き散らしてやると暴れ回った男もいた。検査体制より日本が今困っているマスク不足の問題に本腰を入れるべきだ。』と高須氏への支持と、大村知事への批判が殺到することになった」

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大村知事は数日後、記者会見の席でこれらの批判に言いかえしました。

「検査を増やしたら医療が壊れるって、そんなバカな話はないのでありましてね、検査しなくて、じゃあほっとけってことですか」

いまとなっては、どちらが正しかったかは言うまでもありません。4月には、東京や大阪などの大都市圏では患者の急増に検査が追いつかなくなり、検査能力を拡充せざるをえなくなりました。東京の検査拡充に協力した東京都医師会の会長、尾﨑治夫氏は「感染者を拾い上げてきちんと整理したい」「患者を交通整理しないと感染予防ができない」と述べています。

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感染者を積極的に探さなければ、一時的には病床に余裕もできるでしょう。しかし見逃された感染者がウイルスを拡散してしまうため、のちのちいっそう患者が増え、病床不足に悩まされます。ですから、コロナ患者か急増する前に、あるていどの検査能力と病床および軽症者療養施設を確保するよりほかはありません。

大村知事はもちろん、検査増強とともに病床確保にも動いています。患者を受けいれてくれた病院には、一人当たり100万から400万を交付することに決めました。

「大村知事はロイターのインタビューで『一番大事なのは医療。医師から本当に病院の経営が苦しい、看護師にボーナスが払えない、何とかしてほしいと言われ、病院の支援をしなければいけないと思った』と述べ、交付金は医療スタッフの手当てや感染を防ぐため帰宅せずホテルに宿泊する医師などの費用に使ってほしいと語った」

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愛知県は現在、軽症者療養施設1300室、入院病床500床を確保しています。また検査キャパシティーの増強も続けられており、6月中旬には一日1100件(550人)、秋には一日1300件(650人)に到達の予定。国の新しい方針どおり、濃厚接触者も全員検査するようです。

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大村知事リコール騒動

このように、愛知がコロナ禍第一波を乗り切れたのは、愛知県と名古屋市の連携が功を奏したからといえます。

しかしその間に、河村市長と大村知事の溝はいっそう深まっていきました。3月27日、名古屋市はあいちトリエンナーレの負担金約3300万円を払わない方針を決定します。

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すると愛知県は名古屋市を提訴。とうとう裁判沙汰になってしまいました。

「大村知事は記者会見で『不公正な状態は速やかに是正されなければならない。司法の場で事実をしっかり提示して主張し、司法の公正な判断を仰ぎたい』と述べました。

これに対し、名古屋市の河村市長は記者会見し、『新型コロナウイルス対策に県と市が共同で取り組むべき時に訴えるのは、とんでもないことだ。訴えを放っておくわけにはいかず、市民の税金と名誉を守る』と述べ、裁判で全面的に争う考えを表明しました」

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すると高須氏が、大村知事のリコール運動をはじめたのです。私は、河村市長がこの運動に加担するのか、緊張しつつ見守りました。

高須氏は大村知事が検査増強方針を発表したとき、バッシングを扇動した人。もちろん高須氏としては、大村知事を批判することで、河村市長に味方する意図もあったでしょう。しかし大村知事の検査増強は、河村市長のクラスター対策積極化を支えてもいたのだから、高須氏は間接的に、かえって市長の政策を邪魔していたことにもなります。

河村市長はどちらを選ぶつもりなのだろう。政治思想は合わないが、自分とともに地域住民の命を守るため奔走した大村知事か。自分の味方はしてくれるが、いいかげんな発言で感染拡大抑止を妨害した高須氏か。この選択で、河村市長が、右派的心情と人々の命、どちらをより大事にしているかがはっきりするはずです。

しばらくして、こんな記事が公開されました。

「高須氏は自身が思う知事像について河村市長の名を挙げ、『河村市長に先頭に立っていただいて、知事をやっていただき、大阪のように市長を選ぶといういうのが1番いいと進言した』と語った。しかし、河村市長は『国政を狙ってるから、知事なんてやっとれんがね』と断ったという」

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河村市長が高須氏の要望を蹴った!? 知事リコール運動とは距離を置くつもりなのか??

しかし喜びもつかのま。すぐに、ツイッターに例の発言が流れてきました。

私は、がっくり肩を落とし、「super menber ってなんだよ……」とつぶやくことしかできなかったのです。



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