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新陰流の新しい学び方を考えてみた

こんにちは、新陰流品川道場の会員Kです。

当道場も最近のコロナウイルス流行の影響で、当面は体育館での稽古を行わず自宅で座学する方針となりました。こんな時だからこそ冷静に、不用意に出歩かず時を待つのも武道の実践かと思います。何はともあれ、早く収束することを願っています。皆様も十分お気をつけてお過ごしください。

ちなみに私はベランダで韜(しない)を振ったりしています。道から見えるのでちょっと恥ずかしいのと、天井に届きそうになるのでさすがに窮屈ですね...。そんなわけで体を動かすことには必然的に制約が出てきますが、こんな時に将来的な新陰流の学習方法の可能性を考えたりしています。

今日はそれを書いてみたいと思います。

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(先日の杖術稽古風景。しばらく稽古は休止です。)

口伝から文字、映像へ

私たちは現代人なので、座学をしようと思えば多くのテキストや動画を用いることができます。道場でいただいたり、自分で書き留めたメモやイラストをはじめ、スマホで撮った動画なども自習用に活用できます。

剣術の本当の草創期には、術理は口頭のみで伝えられたのではないでしょうか。それが伝書にまとめられ、書籍になり、書かれていない部分も現代では映像となり、それを活用することができます。道場でしか身につかない暗黙知はあるものの、ますます補完しやすくなっていると言えると思います。

私は普段Web系の企業に勤めていますが、技術が進むにつれて暗黙の部分がより解明され、新陰流の合理性がより理解しやすいものになっていくのでは、と考えています。

「93度」を計測する技術

突然ですが93度...というのは何かというと、「半開半向」という勢法(型のこと)などの中で最善とされる、拳と太刀のなす角度で、相手が押してきた時に最も強く抵抗できる方法として伝えられているものです。もちろん、全ての勢法について全部数値が決められているわけではないのですが、重要なポイントについては攻防の中のヒントとして出てきます。

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(先月の稽古での半開半向練習風景)

このような具体性は他の体さばきの中に見えるもので、上達すると角度が45度、30度...と変わっていく技もあります。新陰流の動きが角度と親和性が高いなら、計測技術と相性がいいのでは...?と考えていました。

新陰流の学び方が将来発展していくとすれば、次にどんな可能性があるのでしょうか。今私が興味を持っているのは、モーションキャプチャです。

モーションキャプチャはすでに多くのスポーツでは取り入れられているのでご存知の方もいるかと思います。体の関節などにセンサーを取り付け、体の軸や角度、動きのデータを取得することができるものです。

個人的に気になっているのはnotchというセンサーで、スマホとセンサーを同期させると関節の動きを写し取ることができます。理想の動き方を登録しておき、そこからのズレを計測する機能もあるようです。(体術の要素が強い技は相手と自分の中心軸がきちんと向き合っていることが必要なので、ズレの測定はとても興味があります)

参考:体の動きを記録できるNotchはスポーツや作業の上達に必須のアイテムになるだろう

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(七太刀・明月之風の風景。自分の軸が相手にきちんと正対していないと上手く相手を崩せません)

ちなみに打太刀(うちだち:指導役)の動きのデータがあれば、組太刀をバーチャルで再現できるはずなので、ヘッドセットがあれば室内での仮想練習も技術的には実現できそうです。

現時点で私たちが直面している社会の変化(テレワークの進展など)を不可逆的なものと捉えれば、武道の学び方にも新しい可能性が出てくるのではないでしょうか。

学び方の発展へ向けて

モーションキャプチャのような新しい手法を利用すれば、より多くの情報を表現することによって、伝統的な技法を非常に正確に伝えられるようになる可能性があります。またそれでも解明しきれない暗黙知があるとすれば、それはまた新陰流の稽古者と技術、双方にとって挑戦の余地であり素晴らしいことではないでしょうか。

ただ念の為、いまのところ稽古体系は原則的に口伝とその実践、文書・映像による補完です。現時点では道場での実践をできるだけ体に染み込ませ、そして忘れずに維持すること。日々できることをやっていきたいと思います。

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