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#7 どうしても譲れなくなった条件

武蔵小杉からマンションへ工場へ住宅へと目まぐるしく変わる街並みを越え長いトンネルを越え、ひたすら揺られること15分。

最初の緊急事態宣言が明けた頃の夏の日、お腹の中に新しい命を抱えた妻とベビーカーでうとうとしてる娘と僕は、羽沢横浜国大の駅を降りた。

今までの記録はこちらからどうぞ

JR埼京線、そして将来は東急東横線/目黒線ともつながり、商業一体のタワーマンションが計画され、駅舎は綺麗な煉瓦と大きな窓から差す陽差しに包まれた期待の新星。

しかし駅舎を一歩出ると、辺りを見渡しても店一つ見当たらない。物件の方へ歩いてみても、現れるのは幹線道路。それを超えると静かな住宅街、きれいで広々とした青空、そして畑。とても長閑な道を歩くのは気持ちいいものでもあるが…

もしこの地に住んで買い物等の日常生活をするとなれば、車は必要そうだ。駅には頼れない。予算4000万円で届くなら駅が発展するまで車を足してもまだ大丈夫そうな気はするが…

そんな疑問を抱きつつ、隣町の賑やかな新横浜の駅ビルで腹ごしらえ。次向かうは妙蓮寺。

駅を降りて間もなく、待ち受けていたのは急激な坂道。息も苦しそうな妻を見て、出来るだけ歩幅を縮めて焦らずゆっくり行くよう助言する。一歩ずつ着実に前へと足を進める。まるで登山のようである。

なんとか頑張っててっぺんまで辿り着いた後、待ち受けていたのは今までの登りを打ち消すような下り坂。逆に駅まで戻るときはもう一度坂道を登っから下らないといけないのか…と考えると、中々厳しいものがあった。

結局、徒歩7分と書かれていたが実際には辿り着くまで14分もかかってしまった。

では車で行けばどうなのだろうか。

この時に考えていた予算を既にそこそこ超過して、予算的にさらにここから車を持つのはやや辛いが…

しかしそういえば不動産仲介の方に紹介いただいた時は、細い道になる手前の駐車場に車を停めていた。歩くのが難しいと感じた日に、果たしてこの物件は車でも容易に辿り着けるのだろうか

最後に大倉山。

少し小洒落た雰囲気の駅前を横に大きな公園を通ろうとすると、早速激しい坂道の洗礼が待っていた。それが終わるとすぐ下りに入り、さらに急な上り坂がまだ待ち構え…妙蓮寺の時よりもさらに過酷な道のりが待っていた。休みを取りつつ励ましつつもしたが…ついに

昨日は雰囲気の良さにワクワクしてたはずの妻がギブアップを宣言してしまった

さて、ここに毎日辿り着くにはどうすればいいだろうか。徒歩は疲れてる時は無理だ。バスはこの坂道を登ってはくれないらしい。電動自転車を使えばいいのか…いやそれでも結構な力仕事になりそうな坂道だ。じゃあ頑張って車を持てばいいのだろうか…けど狭い道を譲り合いながら、激しすぎる坂道は遠回りして避けつつ、それでも時にはアクセルを全力でふかして登っている車を見ると…それもまた大変そうな生活だ。

僕たちはこの家に…毎日辿り着くことが出来るのか?そんな純粋な疑問を抱いてしまった。

住まいは元気な時でも、疲れ果てた時でも、重たい荷物を持った時でも、子供を抱っこしてる時でも、老いた後も辿り着けるものでなければならない。身重は言い訳にならない。むしろテストとしてはちょうど良かった。

そして激しい坂道は万難を産む。疲れている時大変な時ほどその坂道は容赦なく襲いかかる。自転車を使うという替えも効きにくくなる。急峻な地形から道路はしばしば狭くなり、車でのアクセスの難易度も上がり、必然的にバスを通すのも困難となる。自分たちも高齢者となれば、坂道を登るのは特に苦しくなりそうだ。
もし売りたいとなった時に、少子高齢化のなかで果たして見向きされるのだろうか。

しばらく立ち止まって葛藤しながら眺めつつ、後ろ髪を引かれる思いをしながら坂の下へと降りれば、煌びやかなイメージ写真とともに6000万円台と書かれている分譲住宅街があった…

僕たちがこの街に住むには、何かしらの無理がいると悟った。

ということで、私たちの家探しには以下の条件が加わることになった。

・駅からの坂道が激しく無いこと(高低差が20mを超えると厳しい)
・普段の利用に困らないだけの駅力があること
 (スーパー/日用品店/飲食店等いくらかは)
・上記を満たさない場合、車利用が不便で無い道路状況と
 車を持てる予算であること(-500〜-1000万くらい)
・代わりに水害のハザードは、台風の時に逃げなくても死なないなら許容​

さて、次はどこを開拓しようか。

続き


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