フルスイングでドブに投げ捨てた青春とインターネットの恋人と。
1. 3年間引きこもっていた。
高校を中退して、引きこもっていた。
3年間引きこもっていたので、ざっと1,000連休を謳歌していたことになる。
謳歌と書いたが、決して幸福度は高いものではなかった。その話は別の記事で書いたので、興味がある人はそちらを確認してもらいたい。
結局、お弁当屋さんでアルバイトして油をかけられて怒られたり、夜学部の大学に通いつつ大学4年間の学費を稼いで、現在の大学に滑り込む事になる。入学したときには2年間浪人した年になっていた。
2. 引きこもり2年目の夏
引きこもり2年目の夏。
ニコニコ動画に荒らしコメントを書き込むのにも飽きて、ツイッターをはじめた。
中退する前の、元高校の同級生たちは、医学部や東京大学を目指して、受験に本腰を入れる、高校3年生の夏を迎えていた。
一方僕は、現実逃避の真っ只中で、高校を中退するまで、東大を目指していた語彙力をフル投入して、ネタツイートを量産していたらバズった。
今は使っていないアカウントだが、5万ほどのいいねが集まったと記憶している。
その後、定期的にバスるようになった。
短いコメントで、涼やかな読み心地よい文章を書くのは苦手ではなかったのだろう。
現代文でも、一橋で出題されるような、本文を短くまとめるような要約問題が得意だったから。
辞めるまでは、数十人が東京大学に進学する高校に在学していた。
各科目で、全国模試で一桁を取れる人が在籍していた。僕も国語で何度か一桁を取っていた。
しかし、言うまでもなく、10万バズすることより、東京大学に入学することの方が100億倍尊い。
東京大学でなくても、日本大学でも亜細亜大学でも。大学に入って、就職して社会で活躍する方が遥かに尊い営みだった。
真っ暗な部屋の隅で、ぽちぽちと携帯に指を叩きつける僕は、人生の落伍者だった。
夏目漱石は、高学歴にも関わらず、働かずに知的営みに耽る人種を「高等遊民」と名付けた。
しかしインターネットに耽溺してときどき自慰行為をする日々は、知的でもなければ、「高等遊民」でもなかった。
むしろ東浩紀の『動物化するポストモダン』で指摘された「動物的」な生き方そのものだった。
人間は頭脳を駆使して、言葉を書き、ファッションを洗練させ、「動物的」な生き方から離れた行為を文化と名づけたはずなのに。
その知性によって開発され、最高の時価総額を占める会社の多くがツイッターやインスタグラムなど、それにハマると「部屋の隅でぽちぽちと携帯を握りしめる」生き方になる、と言う点で、「動物的」に退化するという東の指摘は、けだし至言だった。
東京大学に入学するために中学受験の時から、直前期には10時間勉強した末路がこれか、と性欲の吐き出されたティッシュを捨てるときに、死にたくなった。
3.裏アカ女子の彼女
ツイッターでバズるうちに、面白い人が寄って来るようななった。
LINEスタンプを作って年間200万円稼ぐ大学生クリエイター、フォロワー10万人いる裏アカ女子。
僕が、裏アカ女子の彼女と出会ったのも、その縁がきっかけだった。
中学まで、恋愛ごっこらしきものをしたことがなかった僕にとって、初めてしっかりと付き合った恋人だった。
2019年の2月頃から2020年の3月まで、約1年付き合った。
2022.07.15
もう会わないと思っていた当時の恋人と、またふとインターネットですれ違ったので、思い出して
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