論文と古典は似ている。
論文と古典は似ている。
論文の重要度は、「どのくらいその分野の研究を行う際に参照されるのか」というインパクトファクター(被引用回数)によって測られる。
インターネット黎明期、Googleがいくつかの先行企業からあたま一つ飛び抜けたのも、ネット検索に、論文のインパクトファクターの考え方を適応したからに他ならない。
古典とされる書物も同様だ。永田希は「古典が古典であるのは、多くの人に参照されているからである」と、明快な定義を下す。
読書初心者はベストセラーと古典を混同して「どちらも有名な本」と、眩暈のするほど目の粗い分類をする事がある。
しかし、ベストセラーと古典が隔絶した存在である所以は、この「多くの人に参照されるか否か」という一点に結実する。
話が逸れるが、ベストセラーについて、議論のレイヤーを一歩掘り下げて語る。
1979年にロラン・バルトが『物語の構造分析』を著した。これは、神話、すなわち世界に2,000年以上残るベストセラーとも言える物語は共通の構造を持つ。
類型的なパターンを持つ、と換言しても良い。
その構造について、世界中の神話をまとめて、共通因数を抽出した書物だ。
そして、この本は発売後10年も経たないうちに、多くの「物語の書き方」的な指南書や、ハリウッドの脚本の書き方に落として使われるようになる。
その度に(時には名前を出されることなく)参照されるロラン・バルトの本書は、間違いなく一級品の古典となった。そして、私は、今をもっても、バルトの『物語の構造分析』を超える説得性を持つ書籍を知らない。
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