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MILGRAM 第一審/コトコ「HARROW」考察

こんにちは。桜小路いをりです。

今回は、MILGRAM第一審MV、コトコの「HARROW」について考察していきます。
ついに10人目、最後の囚人です。

こちらがコトコのMVです。ややバイオレンスな表現がありますので、ご視聴の際にはお気をつけください。

コトコについて

まずは、コトコこと杠琴子の人となりについて。

協力しない?
……私たちの利害は一致するはずだよ。

コトコは、容姿も性格もクールで、ゆるい性格の囚人が多いミルグラムの女性陣の中では、珍しく論理的で理性的。
エスよりも囚人たちをよく観察している節もあり、情報交換を持ちかけてくることもあります。

コトコの誕生日は12月15日、誕生花はモンステラで、花言葉は「壮大な計画」です。

また、コトコは、耳にいくつものピアスを着けています。着用しているアクセサリーの数は、その人の不安の数を表しているそうです。(自分を強く見せようとしているようにも感じます)
自分の正しさを強く信じているコトコには、やや似つかわしくないようにも思いますが、どこかその陰りを強めている要素のようにも思います。

歌詞について

まずは、「HARROW」という曲名の意味から。単語の意味としては「馬鍬」、もしくは「鍬で地面をならす」というものが見つかりました。他にも「人を精神的に苦しめる」という意味もあるとか。この意味は、受け身でも使われるそうです。

終わらせよう HARROW HARROW
黙って強さに泣くなんて
やるせない やらせない 
私もう誓ったんだ
どれくらい HARROW HARROW
くらって 誰かの夢が息を止めるなら
この牙で抉るよ

この歌詞からも推し量ることができますが、コトコは、「悪」を裁くために殺人を犯していたようです。

「地面をならす」というのは、「悪」をこの世から無くしたいということなのではないでしょうか。だとすると、「壮大な計画」という誕生花の花言葉にもうなずけます。

可哀想な心は入れ替えますか 
哀れな妄想も
「悪気ないから」「もうしないから」
どれだけ勝ってきたんですか

この曲にしばしば出てくる「勝ち」という言葉。
これは、喧嘩などで弱い者を打ち負かしたときの「勝ち」に近いのではないかと思います。
弱者を、力だけでねじ伏せて搾取する。ただ、力(それは、恐らく身体的な力だけでなく権力や地位、財産なども含まれる気がします)が強い人だけが、「勝つ」。

コトコは、悪人がその力のために罰せられないことが、「正しさ」がねじ曲がっていることが、何より赦せないのだと思います。
それも、コトコの「正しさ」は、基本的に世間一般の人が思う「正しさ」と同じであるようです。それは、MVの中で、警察が追っている犯人を裁いていることからも伺えます。

誰の所為だ 馬鹿みたいだな
裁き方はどうしよう

エスに協力を持ちかけたことからも分かる通り、コトコは「悪を裁くこと」に強い関心があり、事実、何人かに「制裁」を加えていたようです。
「裁き方はどうしよう」というフレーズからは、あくまで殺人は最終手段だったのではないかと思いました。「HARROW」には「精神的に苦しめる」という意味もあること、女性という身体的な力では劣る場合が多い存在であることからも、それは推測できます。

また、この曲の歌詞のポイントは、「牙」というワードだと思います。

歌詞を読み進めると、「この牙で抉るよ」から「この牙で抉りたい」というように、途中で言い回しが変わっています。
「抉るよ」という言葉からは、まるで、誰かに向かって決意表明をしているような印象がありました。もしかしたら、コトコには、「悪を裁く」ようになったきっかけ、例えば大切な人が傷つけられた過去があり、その人に向かって「いつかこの世から悪を根絶してみせる」と言っているのかもしれません。

一方「抉りたい」という言葉は、完全に自分の意志、自分のための行為のようにも捉えられます。最初は誰かのためだった行動が、いつしか自分のための行動になっている。
そんな意味にも感じました。

最後の「正しさに溺れていたい」という言葉も、少し引っかかります。「正しいこと」をするのが、ひたすらコトコの存在意義になっているような、そんな印象も覚えました。

MVについて

倉庫のような場所、壁に貼られた色んなニュース記事のような紙の数々。MVの始めから、既に「只者じゃない感」が漂っています……。

恐らく、コトコはその倉庫を拠点にして、犯罪者などをピックアップし、制裁を加えていたのだと思います。
髪が短いのも、ピアスをいくつも着けているのも、もしかしたら自分を強く見せるためなのかもしれません。
スマホを片手に、路地裏で男性(ネットニュースの顔写真と同じ人物なので、犯罪を犯した人であると思われます)を追い詰める場面では、顔がほとんど見えないようにしています。身長も171㎝あるので、男性に見えるようにしているのではないでしょうか。

また、MVの随所に出てくる「狼」には、非常に色んな意味があります。
古代ローマで狼が象徴するのは、「勇気」「勝利」「保護」。一方、現在の西洋では「狡猾」「残酷」などの意味で捉えられているとか。「凶悪で狡猾な悪の手先」とされることもある一方、「英雄」や「家族愛」を象徴することも。他にも、「死の使者」と呼ばれることもあります。(ちなみに狼の牙には、「魔よけ」や「幸運のお守り」という意味もあるそうです)

どれも当てはまりそうで逆に怖いですが……。
もし「家族愛」という意味を強く取るなら、コトコは家族の仇討ちのために制裁を続けているとも捉えられる気がします。
特に、女の子が被害者の事件に執着しているような気もしたので、コトコの姉妹が何かしらの被害に遭い、その犯人は結局裁かれなかったのではないでしょうか。

また、コトコが雪原のような場所で足を止め、息を切らす横で、狼がニヤリと笑うシーン。それに釣られて、コトコも狼と似た笑みを浮かべた瞬間に、コトコの中のストッパーがなくなってしまったようにも思いました。理性的だったコトコが、「正しいことをしている」という状況に酔ってしまったような。あるいは、既に酔いが回っていて、その瞬間に中毒になってしまったような。
言ってしまえば、その瞬間、狼が「保護」や「家族愛」を象徴するものから、「狡猾」「残酷」「死の使者」を象徴するものに変わったような気がします。

MVの冒頭、椅子に座るコトコと、その横で寝そべる狼の目が、赤く光ります。ミルグラムでは、「赦さない」と判断された囚人の目が赤く表示されることになっているので、コトコと狼は、このシーンでは明らかに「悪いことをしている」と判断されるのではないでしょうか。ただし、それはあくまで法律などによる基準に照らし合わせた場合の「悪」だと思います。

それが、あえて心象風景に入っている。ということは、コトコは暗に「人を殺した(=悪いことをした)私を、エスならば赦せるでしょう?」と挑発しているようにも捉えられます。法律に照らし合わせれば罰せられるコトコを、エスは赦すことができる。ボイスドラマでもそんなことを言っていたので、このシーンには、エスに対して協力を持ちかけるメッセージの意味もある気がします。

コトコ、一筋縄ではいきません……。

ボイスドラマからも、コトコには、独特の余裕を感じました。
エスが「おまえの罪を歌え」と言う前に「私の罪を聴くがいい」と言ったことが、なんだかエスのことを手のひらの上で転がしているようにも聞こえました。
エスも最後のほうは過呼吸気味になってしまい、すっかりコトコのペースに乗せられた印象があります。
そういう意味では、「人たらし」的な何かが、コトコにはあるのかもしれません。

まとめ

めちゃくちゃ余談なのですが、私は「MILGRAM」の第一審の曲の中で、「HARROW」がいちばん好きです。
最初は10番目だから印象に残ったのかな、と思いましたが、何度も色んな聴き方をして、「やっぱり『HARROW』がいちばん好きだー!」となりました。

しかしながら、「MILGRAM」の曲、どれも本当に良い曲で、流石としか言いようがありません。
考察記事を書いている間は、基本的にその囚人の曲(エスなら「アンダーカバー」)を流していたのですが、いつまでもループ再生しても飽きないどころか、どんどん曲が深みを増していく感じがしました。

改めて、すごいプロジェクトです……。(制作陣の皆様、無理しないでくださいね……ちゃんと寝てください……。)

ともあれ、とりあえず第一審の囚人10人+エスの分の考察を終えました。

これからは、思いついたことがあれば随時記事にまとめつつ、第二審MVをのんびりと待ちたいと思います。

「MILGRAM」の記事はマガジンに一括でまとめてありますので、お読みいただけますと幸いです。

今回お借りした見出し画像は、濃いピンク色のお花の写真です。華やかで、どこか危うい魅力のある雰囲気に惹かれて、選ばせていただきました。はっと目が覚めるような鮮やかさが、コトコにぴったりです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。