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桜色の本棚

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私が出会った素敵な本のこと、読書のことを綴った記事をまとめました。読者の方と本との橋渡しができたら嬉しいです。
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#本

宮部みゆきさん『ソロモンの偽証』/誰かの真実、ひとつの事実。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、宮部みゆきさんの『ソロモンの偽証』を読破しました。 『ソロモンの偽証』は、たびたび映画化・ドラマ化もされている、本好きなら絶対タイトルは知っているくらい大人気の作品。 私自身、小学生の頃に文庫本発売のポスターが書店に大きく掲げられているのを見てから、「いつか読んでみたい」とずっと思っていた憧れのシリーズでした。 一步引いちゃうくらい分厚い単行本で3冊、文庫本だと6冊の超長編ですが、あえて言わせてください。 もしパラレルワールドが

今年出会えてよかった本 5冊〜2023年〜

こんにちは。桜小路いをりです。 今日の記事は、今年出会えてよかった本たちについて。 小説や新書など、合計5冊、ぜひ最後までお付き合いください。 住野よる『腹を割ったら血が出るだけさ』 今年のはじめにご紹介した、住野よるさんの小説。 ドキッとするタイトルで避けてしまうのはもったいない……! このタイトルに嫌悪感を懐いた方にこそ、手に取っていただきたいと思う作品です。 私の愛読書のひとつである『また、同じ夢を見ていた』と地続きの世界観になっていて、痛いほど切実なストーリ

磨いていく、少しずつ。~『感性のある人が習慣にしていること』~

こんにちは。桜小路いをりです。 感性がある人って素敵だな、と思うことがよくあります。 季節の移り変わりや人の感情、身の周りの物事に敏感で、その時々で自分らしさを貫いて行動できる人。 私もそんなふうになりたい……! という想いから、とある本を手に取りました。 それが、『感性のある人が習慣にしていること』です。 この本では、「感性を養う5つの習慣」として、「観察する習慣」「整える習慣」「視点を変える習慣」「好奇心を持つ習慣」「決める習慣」の5つが紹介されています。 著

光と影で描くもの~朝井まかてさん『眩』と「吉原格子先之図」~

こんにちは。桜小路いをりです。 私は、絵を見ることがとても好きです。 まだまだ知識は浅いので、これから美術史なども、もっと勉強してみたいなと思っています。 私が美術に興味をもつようになったきっかけ。 それは、この作品でした。 葛飾北斎の娘・葛飾応為の作品である「吉原格子先之図」。 こちらは、版画ではなく肉筆画で、光と陰を使って巧みに吉原の見世先を描いています。西洋画のような陰影を際立たせた表現が、私はとても好きです。 先日、この作品が原宿の太田記念美術館で久しぶりに

つながりゆく心の温かさ〜瀬尾まいこ『掬えば手には』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、瀬尾まいこさんの『掬えば手には』を読み終えました。 この物語の主人公の梨木くんは、勉強も運動も真ん中の順位で、「普通であること」がコンプレックスな大学1年生。 しかし、彼は中学・高校でのとある出来事から、「自分は人の心が読める能力をもっているのではないか」と感じています。 でも、その能力は、取り立てて「超能力」というほどはっきりとしたものではなく、「偶然」とか「ちょっと鋭いだけ」と言われたらそれまでのもの。 でも、そんな力を時た

太宰治『女生徒』にもらった、想いの数々。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、プロフィールの記事に「愛読書」の項目をプラスしました。 (実は、少しずつアップデートされているプロフィール記事。時折のぞいていただけると嬉しいです。) 私が愛読書として必ず挙げる本のうちのひとつが、太宰治の『女生徒』です。 高校1年生のときに出会ってから、ずっと大好き。 今年の夏の角川文庫の「カドフェス」でピックアップされていて、ちゃっかり限定カバーもお迎えしました。 『女生徒』が表題になっていますが、太宰が得意とした女性の告

愛すべきミステリー小説〜『名探偵のままでいて』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 「このミステリーがすごい!大賞」受賞作、小西マサテルさんの『名探偵のままでいて』を読み終えました。 語彙力をすっ飛ばして書くと、ほんっとうに(!)素敵な小説でした。 古典ミステリーへの愛、ミステリーそのものへの愛が随所に溢れていて、オマージュも散りばめられていて。 古典ミステリーがお好きな方にはもちろんのこと、あまり馴染みのない(私のような)方も、すごくすごく楽しめる1冊だと思います。 この物語の探偵役は、主人公の小学校教諭・楓の祖父

「きらめくヒント」をくれる1冊〜田辺聖子さん『歳月がくれるもの』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 最近、大切な御守りになる1冊と出会いました。 それが、田辺聖子さんの『歳月がくれるもの まいにち、ごきげんさん』です。 このエッセイは、月刊誌『MISS』で連載されていたもの。 私よりも少し年上のお姉さん世代の方に向けたものなのですが、だからこそ、「素敵な大人になるヒント」が散りばめられて、今、出会えてよかった本でした。 「聞き書き」の形式で、本当に実際にお話しを聴いているような気持ちになれる距離感、親しみやすさも魅力のひとつ。 200

雨の日の読書、現実との境目に。

こんにちは。桜小路いをりです。 私は、雨の日に家で読書をする、ゆったりとした時間が好きです。 小学校低学年のときは、雨の日に図書室に行って絵本を捲る休み時間が、ひそかな楽しみでもありました。 もちろん今も、特に予定のない雨の日は読書にあてることが多いです。 なんで、こんなに「雨の日の読書」に惹かれるのか。 その答えを、少し前、アニメ「クールドジ男子」の台詞の中に見つけました。 (ちなみにこの後、同じ行を繰り返し読んでしまう、という「あるある」なドジが続きます。この落

本屋さんの「手描きポップ」の力に誘われて。

こんにちは。桜小路いをりです。 私は、本屋さんが大好きです。 それは、四方を本に囲まれた幸せ空間だから……というだけでなく、純粋に、本と読者の橋渡しをしてくれる「本屋さん」という場所が、すごく好き。 そういった意味では、ネットの書店やAmazonで「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」というおすすめを眺めるのも好きです。 あのシステム、新しい本に出会えるのは嬉しいし楽しいけれど、積ん読が増えるのが少しジレンマだったりします。 私が、本以外で、本屋さんでよく

「家が好き」って、素敵なこと。〜井田千秋さん『家が好きな人』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 皆さん、ゴールデンウィーク中は何をされていますか? 私は、お友達と遊びに行く予定が少々、あとはもっぱらお家で過ごす予定です。 ステイホームなんて全く関係なく、お家にいることがいちばんの贅沢時間だったりします。 先日、そんな気持ちを再確認できる本に出会いました。 それが、井田千秋さんの『家が好きな人』です。 家での時間をめいっぱい楽しむ人たちが描かれた、コミック&イラスト集。 優しいタッチのイラストに癒やされながら、「やっぱり『家』

ひとつの言葉、いくつもの思い出。〜川上弘美さん『わたしの好きな季語』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、川上弘美さんのエッセイ集『わたしの好きな季語』を読み終えました。 96個の季語に纏わる思い出を綴ったエッセイが、96編。 各エッセイで、その季語を使った有名な俳句も紹介されています。 趣き深い季語、川上さんの素敵なエッセイ、そして名句がぎゅっと詰め込まれた、宝箱のような1冊です。 しなやかで繊細で、ちょっとお茶目な川上さんの文章は、読み進めるたびに心地よくて、つい一気読みしてしまいました。 優しい手触りのコットンのお洋服みたいな。

ヨルシカと読んだ『アルジャーノンに花束を』

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を読み終えました。 長年愛され続けている、不朽の名作としても名高い本作。 今まで、なかなか読む一歩を踏み出せなかったのですが、このたび、ようやく読了することができました。 そのきっかけのひとつが、ヨルシカの「アルジャーノン」という楽曲です。 実は、あらすじや結末はもともと知っていたのですが、きちんと読むのは、これが初めてでした。 『アルジャーノンに花束を』は、幼児ほどの知能しかもってい

「見えないこと」を見つめ直す。〜『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 小学生の頃、こんな活動がありました。 クラスメイトとペアを組んで、一方がアイマスクやタオルで目隠しをして、もう一方にサポートしてもらいながら廊下を歩いたり、階段を昇り降りしたりする。 そして、サポートする側、される側それぞれの視点を経験して、その中で、「目の見えないひと」への理解を深めよう、というものだった気がします。 どんな子とペアを組んだのか、その活動の後で宿題になった感想文に何を書いたのか、私は、もう覚えていません。 でも、その