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「自己矛盾」を抱える、キモくて愛らしい「人間」を描く天才の書籍を紹介したいです。

人は自己矛盾を抱えている生き物で、そこがキモくて愛らしい

いきなり言ってることがすでに矛盾してるんですが、例えばこんなん👇

・お金をたくさん稼ぐことが幸せではない(でも平均以上は欲しい。欲しいものを我慢したくない)
・有名になることが幸せではない(でも孤独はやだ。さみしい)
・キャリアを積むことが幸せではないかもしれない(でも30歳で新卒レベルのことしかできないのは嫌だ)
・結婚して子供を産むことが1番の幸せではないかもしれない(でも彼氏はいてほしい。恋愛は楽しい)
・友達や彼氏や上司とビジネスについて議論できる女の人ってかっこいい。(だからと言って生涯バリキャリを目指したい訳ではない)
・容姿が存在価値の全てではない。(でも変えられるところはできるだけベストな状態になるように努力した方が良い)
・ストレスなく穏やかな生活が幸せだ(でも変化・成長のない日々は退屈かもしれない)

上に挙げた例は、私自身が日々感じている矛盾を羅列したものです。ただ、白黒はっきり「私はこうです!!」と語れないことが沢山あると感じるのは、私だけじゃない気がします。
あと最近、「白黒はっきりさせたほうが良い」的なシンプルイズベストの意見に疲れました。だってグレーなのが本当だし、白に行く時もあれば黒に行く時もあるし。
実際、友達との会話で、「人間だわ〜〜笑」という表現を使用する頻度が増えました。意訳すると、「矛盾しとるな〜〜でもどっちも私なんよな〜〜しゃーねえよな〜〜人間ってそういうところあるよな〜〜〜笑笑」です。(知らんけど

言ってることとやってることが矛盾してる自分をキモいな〜って思うこともあるし、そんな自分はかわいーなと思うこともあります。(好きな人のダメなところも愛おしく見えちゃうアレみたいな)

そんな矛盾を抱えている”人間”を描く天才がいるので、紹介したく。

Fさんです。

Fさんの代表作は、言わずもがな「20代で得た知見」ですので、初めてFさんを読まれる方にはこちらをお勧めします。Fさんは眠れない夜を言語化する天才でもあるので、そのエッセンスが詰め込まれまくってます。

今日紹介したいのは、Fさん著の小説「真夜中乙女戦争」。
この作品には、矛盾を抱えている”人間”が色濃く登場します。

矛盾の象徴「先輩」のセリフ

作中に登場するキーパーソン「先輩(主人公の大学の先輩。超美人でミステリアス。)」は、自己矛盾を抱えています。その様子がなんとも綺麗に描かれているんです。彼女のセリフを引用します。

「可愛い可愛いって言われて素直に照れるほどもう子供じゃないし、綺麗とか美しいとか言われて知ってますって言い返せるほどあたしもまだ大人じゃなくてさ。」

真夜中乙女戦争 / F

「愛してるけど、その愛ももう、灰みたいになっててさ」

真夜中乙女戦争 / F

このセリフを読むと、先輩は恋愛依存をしてるように感じます。でも、それまで見せていた先輩の行動からは、依存体質的な部分は感じ取れないんです。「”依存体質”とまではいかずとも、そういうとこもあるよね実際」といった、グレーな部分を生きている、現実世界にもいそうなリアルな存在です。
インスタで、映えはそこまで気にしてないけれど、いいねの通知は気になっちゃう人みたいなね。(人間やわ・・

でね、そんな先輩を「キモい」と捉えるのではなく、「愛らしい」と捉える、まるで添え文のようなFさんの文章がなんとも素敵なのです。👇

どうして悲しい話をする女は、こんなに綺麗なのだろう。

真夜中乙女戦争 / F

「どんだけ愛に飢えてるんですか」そう私が茶化すと、だって、東京だよ、ここ、と彼女は自嘲気味に笑った。

真夜中乙女戦争 / F

「どうにもならないことを、そのまま愛そう」という優しささえ感じます。(言い過ぎ?)

なぜ矛盾する姿を「愛らしい」と感じるのか

告知期間にFさんがストーリーに投稿した、本書の一説をみてください。👇

Fさんインスタより

自己矛盾しているけれど、結局何かしらの行動を選んで、選んだ先に感じる不都合さえ受け入れて進んでいく様子に、愛らしさを感じるのかもですね。

まとめ

真夜中乙女戦争を読んで「何かが解決する」という訳ではないです。でも少なくとも、矛盾を抱えていることを”苦しい”と捉えている人にとって、「矛盾していて良いし、その姿が美しいよ」と思わせてくれる優しい文章に包まれる体験は、何かの救いになると思い、紹介しました。

映画化されているので、監督目線の「真夜中乙女戦争」について知るのもまた楽しいので、参考リンク貼っときます。


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