新城拓也

神戸市で、緩和ケア、在宅医療を中心に活動しています。

新城拓也

神戸市で、緩和ケア、在宅医療を中心に活動しています。

最近の記事

「心」はないのでは

先日養老孟司さんと東畑開人さんのオンライン対談を聞いて「心とは何か」についての話を聞いた。 そう「心」は、例えば、精神、情動、意識とどう定義してもおさまらないしかも実態のないものなので、暗喩でしか上手く捉えられないものだ。 「心というものはない」のだ。心身二元論(デカルト)の中で想定された身体とそれ以外に「心」を想定したはずの心というのはあるけどない、ないけどある。 心は物語として記憶され、固着されてはいくが、その力は悪しき物語の乱立で忌避され、2000年頃からは脳科学の

    • 医療者たちの日常の暴力

      齋藤美衣さんが、雑誌精神看護(医学書院)にかかれた2回連載の記事「ありふれたふつうの措置入院」の内容に毎日の仕事への姿勢が変わるきっかけがあった。この原稿を見たのはSNSでご本人の投稿で紹介してあったのを、病院の図書館で見つけて読んだ。何度かご本人ともやり取りしたことがあり、歌人でもある齊藤さんが使う言葉の繊細さと精密さにはいつも驚いていた。 私は、自分のクリニックの仕事をしながら、神戸市内の別の病院でも仕事をしている。いつもマイノリティ志向だった自分にとって、緩和ケアの仕

      • 「あらゆることは今起こる」 ある日曜日のこと

        僕にもあなたにも誰にでも「ADHD」っぽいところと、「ASD」っぽいところがある。自分を理解し他人を理解すれば、色々な事に諦めも付きそして工夫も思いつくものです。 例えば僕の知り合いの方は必ず約束に遅れます。「いい加減な人だなあ」と思わず、いつも必ず遅れる時間を見計らって約束の時間を決めます。だいたい30分。そしてただ早くするだけだと相手に読まれて、「え、でも予定の公演は○○時○○分だから、○○時でいいよな」とか言われて結局遅刻されてしまうので、必ずエサをつくります。 「

        • カフカ断片集より

          この本は、編集された頭木弘樹さんの訳でタイトルがつけられています。1ページくらいの作品が多く、開いたところを読み感じたことを一人で対話します。まるで歌集や聖書、そしてタロットカードを読むような読み方がまた楽しいです。カフカが残した断片の中から、一つを引用します。 分かりそうで分からない。虚無的でもあり一見本質を射貫いているような感じはあるのですが、やはり意味が分かりません。 しかし、この「教育」を「性教育」と読みかえてみてください。 こう読んでみるととても現代的な意味が

        「心」はないのでは

          ありふれた日常の依存 セルフ緩和ケア

          緩和ケアに関わる医療者は、薬の使い方、評価の仕方を患者に教える。きれいな表を書くことに専念する患者も時に現れる。あれは「治療に依存させること」でもあるのだ。セルフエフィカシーとはきれいな言い方だが、自分のコントロール感を増すことは、摂食障害のそれと同じく、何か数値的なものに依存させて、不安感を軽減することでもあるのだ。僕は無邪気に、自律性が高まる患者に出会ったときに良かったと言えません。もっとことは複雑なのです。 関わる時間の短い緩和ケアの医師、患者関係では「治療者に依存さ

          ありふれた日常の依存 セルフ緩和ケア