ありふれた日常の依存 セルフ緩和ケア
緩和ケアに関わる医療者は、薬の使い方、評価の仕方を患者に教える。きれいな表を書くことに専念する患者も時に現れる。あれは「治療に依存させること」でもあるのだ。セルフエフィカシーとはきれいな言い方だが、自分のコントロール感を増すことは、摂食障害のそれと同じく、何か数値的なものに依存させて、不安感を軽減することでもあるのだ。僕は無邪気に、自律性が高まる患者に出会ったときに良かったと言えません。もっとことは複雑なのです。
関わる時間の短い緩和ケアの医師、患者関係では「治療者に依存させること」で乗り越えられることもある。「何かあったらいつでも自分に電話して」というやり方は、自分への依存を作るやり方で、長く関われば破綻する。
そういうことが分かるようになり、そして依存とは、依存症とは何かを考えていたときにちょうど出版されました。生存戦略としての依存、害の少ない依存の作り方、表現そして安全に狂う方法とは何か。
支援者は相手(患者など)にとって害の少ない依存を提案することはできても、「依存するものそのもの」を差し出すことはできない。「○○やってみたら」「○○してみたら」はまず失敗する。
この本では瞑想やマインドフルネスの副作用も書かれていました。
副作用がなさそうな、マインドフルネスの一番の副作用はここなのだ。無邪気ではいられない。僕も深呼吸だけでは頭がまとまらないのだ。
また最近は患者や特に遺族のカウンセリングに多くの時間を費やしているが、今カウンセラーは「コーチ」なのだ。そのコーチのしている技法についても書かれています。
ありふれた依存についてこの本からとても多くのヒントを得ました。依存、アディクション、そして依存症を治すというのはどういうことなのか一度考えてみる必要があります。