【新城マガジン】神輿の伝統を守り、地域に祈りを届ける-神輿保存会「武蔵會」と「関睦」
自己紹介をお願いします
田谷会長:田谷明彦と言います。武蔵新城で生まれ育ち、今は高津区に住んでいます。
若い頃はスキーとサーフィンが大好きで、20代から30代くらいまで、夏は波乗り、冬は雪山でスキーって感じで楽しんでました。長いブランクがあったんですけど、またスキーにハマってしまって50代になってから再びやり始めましたね。最初は上手にできなかったけど、だんだんと上達していく感じが面白くて続けています。
武蔵會に関わるきっかけを教えてください
田谷会長:武蔵會に関わるようになったのは、実は40歳を超えてからなんですよ。サーフィン仲間に『神輿を担ぎに来ないか』と誘われたのがきっかけです。最初は少し抵抗があって、神輿の衣装なんて着る機会がないし、ちょっと恥ずかしいと思ってたんですよ。でも、いざ担いでみると、仲間と一緒に盛り上がって、自然と楽しさが湧いてきたんです。知り合いが増えて、何かを一緒にやるって楽しいなと思いどんどんのめり込んでいきましたね。
現在は4代目の会長として、武蔵會の伝統を守りながら活動を行なっています。
加藤会長: 私が武蔵會と深く関わるようになったのは、関神社神輿保存会『関睦』の会長として、兄弟会のようにお互いを支え合ってきた歴史があるからです。約50年の長い歴史がある武蔵會とは、お互いに助け合って活動してきました。そのため、祭りごとになると自然と協力する体制が整っているんですよ。
武蔵會の活動について-地域を清め、祈りを届ける
武蔵會の活動内容について教えてください
田谷会長:武蔵會は約80名の会員が所属しており、新城神社のお祭りの日に神輿を担ぐだけじゃなく、地域の伝統を守りながら次世代にそれを繋いでいくために活動を行なっています。神輿の組み立てやメンテナンス、祭りの準備から運営まで全てを担っています。新城神社は年に4回、神社の行事があり、桜祭りやお稲荷様などの手伝いも行っております。
また、新城神社の行事だけでなく、他の地域のお祭りを手伝いに行くことも大切な活動の1つです。
新城神社のお祭りでは毎年300人以上の人が神輿を担いでくれています。毎年これだけの人が担ぎ手が来てくれるのは、普段から他の地域の祭りに手伝いに行き、つながりを作ることを大切にしているからです。
加藤会長: お祭りで神輿を担ぐためには、多くの方の協力が不可欠なんです。なので、私たち関睦も協力させていただいています。こうした地域同士の支え合いは、神輿の文化を次世代に繋ぐための基盤ともいえますね。その支え合いがあるから、いろんな地域で毎年、神事を行うことができています。本当にありがたいことです。
神輿を担いで地域を巡ることにはどのような意味があるのでしょうか?
田谷会長:もしかしたら、街の外から見ると私たちがただ騒いでいるだけに見えるかもしれませんが、実際にはそうではなく、神様に感謝を捧げ、街をお清めするという伝統的な意義を理解して行っているんです。
加藤会長: 神輿というのは、1年に1回、神様を神社からお神輿に移して街を巡るんですよ。本来、神様は動けないけれど、神輿に入ることで街を清めながら巡っていける。高齢の方や、神社にお参りに来られない人たちのためにも、神輿が家の前まで行くことで、感謝やお願いを伝えることができる大切な日なんです。それが神輿が街を練り歩く理由なんですよね。
ただ、昔から受け継いでいるこの伝統をこのままずっと行うのは難しいなと感じることも多いんですよね。
田谷会長:そうなんですよね。本当は昔のまま受け継いでやりたいんですけど、時代も変わって年々形を変えていかなければなりませんね。街も開発されて、今まで神輿の休憩場所だったところに新たな施設ができたり、騒がしさから時間を制限したり、毎年同じようには行かなくなってしまっています。
なので、少しずつできなくなることが多くなって「昔はあれができてよかったよな」ということも増えてきています。その状況でも、昔からの伝統をなんとか引き継ぎ、試行錯誤して行なっています。毎年同じようにはできないかもしれないけど、協力してくれる人がいて、毎年やることができるっていうのが一番大事だと思ってやっていきたいです。
神輿の保存会に入っていてよかったことはありますか?
田谷会長: 神輿保存会をやってきて一番よかったことは、やはり繋がりができることですね。神輿を通じて繋がりができることで、お互い助け合える関係が築かれていますし、活動が広がっていくんです。神輿をやっていなかったらきっと出会えなかった人たちと繋がれることが、一番嬉しいことです。どこに行っても『会長!』って声をかけてくれたりしますし、他の地域に手伝いに行っても関神社の人がいると本当に安心しますよね。
加藤会長: 私も同じですね。地域内に限らず、外へも繋がりが広がっていくのが保存会のいいところです。お祭りの日だけでなく、普段の生活でも繋がりを感じられます。例えば、会員の中には職人さんも多くて、家の何かが壊れた時に直してもらえたり、水道が壊れたらすぐに来てもらえたりして、本当に助かっています。
新城の街だからこそできること-支え合いと人々の繋がり
この地域だからできていることはありますか?
田谷会長:この地域の人たちが協力して、祭りを作り上げてくれることですね。神輿を担いで回ると町会のありがたさがすごくわかるんですよ。各町内で、神酒所を設営してくださり、皆さん一生懸命準備してくれて、もてなしてくれるんですよね。本当にそれがあるからやっていけるのもあるんですよね。
加藤会長:お祭りの当日は、300人くらいの人が訪れるので本当に大変なことをいつもやってくれているんですよね。みなさんが協力してその場を回してくれているので本当に助かるんですよね。
田谷会長:また、祭り当日には、半纏を貸し出して地域の皆さんにも参加してもらいますが、毎年50枚ほど半纏を用意していますが、みんなで着回して参加してくれています。地域の人も一緒に参加してくれるのは本当に嬉しいでことですね。
加藤会長:都会だと同じ地域に住んでいてもお互いを知らないことが多いですよね。でも、この街は、自然と人が繋がり合う街なんだと実感しています。お互いに差し入れをやり取りしたりして、地域での支え合いが続いているのはとてもありがたいことです。
武蔵會の会員はどのように集まっていますか?
田谷会長:新城の街は、居酒屋や地域の行事を通じて人々が自然と繋がりやすく、新しい会員も次々と加わっています。居酒屋で一緒になった人が『神輿を担ぎたい』と言ってくれることも多いんですよ。年齢層も若い人から年配の方まで幅広く、若い世代も徐々に増え、地域との繋がりが強まっていきます。
他の地域では神輿を担ぐルールが厳しいところもありますが、新城は比較的自由です。例えば、足袋を履かなくても担げます。ただし、どこの神輿団体かわかるように所属の半纏(はんてん)を着ることで、一員としての誇りと責任を持って参加してもらっています。この自由さや新城の街のつながりやすさが、新しい担ぎ手や会員を迎え入れる原動力となっています。
武蔵會のこれからについて-次世代へ伝統を守り続ける
武蔵會のこれから大切にしたいことを教えてください
田谷会長: 神輿を担ぐだけじゃなく、地域の人たちとの繋がりをさらに深めて、この伝統を次の世代に引き継いでいきたいと思っています。伝統というものは、新しく進化させるものではなく、今ある形を現代に合わせて守っていくべきものだと考えています。これからも、その姿勢を大切にしたいですね。
加藤会長: 辞めるのは簡単だけど、一度途絶えた伝統をもう一度始めるのは本当に大変ですからね。だからこそ、私たちはこの伝統を守り続ける責任があるんだと思います。
田谷会長: 武蔵會が『保存会』として存続しているのは特別なことだと思っています。新城神社から正式に神輿の管理を任されている団体だからこそ、神社から信頼されている証でもあるし、誇りでもあります。他の団体には神輿を所有せず、ただ担ぐだけの同好会もありますが、武蔵會は神輿そのものを守り抜く存在です。だからこそ保存会として伝統を守ることが大切だと思っています。
加藤会長: 神輿があると、それを担ぎたい人、関わりたいと思う人が自然と集まってきますよね。私たち関睦もこれからも協力し、武蔵會と共に地域の人々との繋がりを深めていければと思っています。
田谷会長: 私たちが担っていることは非常に重要なことなので、しっかりとその価値を次の世代にも残していき、この地域に祈りを届けていきたいです。