そろそろみんな忘れただろうから、「島耕作がアナログレコードの盤面をつかんで炎上したやつ」について書いてみる


 コミックモーニングの、2023年10月5日発売号(45号)の表紙で、島耕作がアナログレコードの盤面を触っていて、「扱い方知らんのか!」「指紋がつくやろ!」「初芝はオーディオ製品作ってるのに!」「島耕作、レコード会社に出向していたこともあったのに!」「アシスタントに投げっぱなしで描かせたのか?」などと、炎上したやつ。

 
 その件がX(旧ツイッター)のTLに上がってきた時、自分もちょっと何か書きたくなったが、その時は、やめた。

 私、アナログレコードの盤面、平気で触ります。
 ただし、「触るなんて!」という人の言い分も、わかります。
 まず、10代の頃は(CD普及前です)、盤面に触るなんてもってのほか、レコードは両手で縁を持ってそーっとレコードプレーヤー(ターンテーブルなんて呼称はまだ知らなかった)に載せる、というのが、あたりまえだった。
 自分で買えるレコードの数が限られているので、友達数人で貸し借りし合うことが多かったが、「人のレコードに指紋をつけたらどうしよう」という恐怖で、「貸し借りし合う」から「カセットテープを渡して録音してもらい合う」に、変わったほどである。
 なので、高校生の時、ラップ/ヒップホップを知った時、びっくりした。しゃべらないのにDJとか名乗っている人ら、平気で盤面触っとる! しかも、触るだけでもたいがいなことなのに、スクラッチとか言って、レコードをキュッキュと前後にこすったりする始末。
 針がいかれるじゃないか、そんなことしたら! でもみんな、あたりまえにやっている。じゃあ、あれか、そういう特殊なジャンルだから、異様に丈夫な針や、触っても汚れない処理済のレコードを使っていたりするのかもしれない。などと推測して、その時は気持ちを収めたのだが。

 それから10年ちょっと経った頃。ひょんなことから自分もDJを始めたのがきっかけで、ヒップホップ以外の人たちも、平気でレコードの盤面を触ることを知ったのだった。で、自分も、普通に触るようになったのだった。
 だって、たとえスクラッチをしなくても、盤面を触らないと曲の頭出しができないし、左右のレコードのリズムを揃えてつないだりもできないので。
 でも、指紋がついたらどうするの? レコードクリーナーじゃ、とれなくない? 水で洗えばいいんだよ。え、水で!? そう、常識だよ。と、僕に教えてくれたのは、確か、曽我部恵一だったと思う。
 現に、島耕作の炎上の時も、「DJは普通に触ります」というコメントを飛ばしている人が、何人かいた。
 ですよね。と思ったが、そこで「そうよそうよ」などと乗っからなかったのは、この表紙で島耕作が使っているターンテーブルが、あきらかに、DJ用のそれではないからである。
 もしこれが、テクニクスのSL-1200MK5(日本中のクラブにある定番中の定番)だったら、島耕作の肩を持つこともできた、かもしれない。

 何が言いたくて、こんな、終わった話について延々と書いているのか、というとですね。
 自分は肯定か否定か、白か黒かを、パッとは言えない。肯定でも否定でもあるし、白でも黒でもある。なので、なぜそうなのかを、ある程度の文字数を使って説明しないといけない。
 という、今回のような件って、ほんとX(旧ツイッター)と合わないなあ。「Xと」だけでなく、SNS全般に合わないなあ、という話かもしれない。
 というようなことを、思ったのでした。

 中古アナログレコード店を経営している知人によると、最近は海外のお客さんの勢いがすごくて、レコード、とてもよく売れているそうです。
 その彼の店や、HMV record shopやディスクユニオンなんかにも行くけど、自分は最近は、ブックオフの端っこや、個人経営の古本屋の隅にあるアナログのコーナーを漁ることが増えている。
 昔は、そういうところのアナログ盤は、状態が良くないことがあったが(盤が反っていたりする)、最近はわりと、どこもちゃんとしている気がする。


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