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水を編む人々 其のニ

レジデントアーティストの話を受けたとき、東京都内でジャズといけばなとテクノロジーを合わせた公演を行なっていた。新しさを追求することは常に重要である一方、前に進むことが何を失くすことになるのか。革新と普遍は僕にとって大きなテーマである。綿々と続く日本の原風景とともに豊かな文化を醸成してきた金沢市において、いまいちど「残す」意味を見つめ直したい。-「水を編む人々」公演フライヤーより

01.水を編む人々:
浅野川と犀川に挟まれた金沢市街地を、1日をかけて歩き回った。
観光地からすぐ、閑静な住宅地の小路で衝撃的に目に入ってきたのは用水路の水流だった。それは各地で見かける澱んだものではなく、道端にもかかわらず激しく勢いのある姿。その活き活きとしたすがたに、大門山から日本海へと流れる水を取り入れながら、今日まで脈々と築いてきた金沢市民の生活と情緒を見たような気がしている。

02.げに百鬼夜行一幅の活図なり:
「金沢なる浅野川の磧は、宵々ごとに納涼の人出のために熱了せられぬ。」
泉鏡花の小説「義血侠血」は金沢を舞台とし、旅芸者を中心とした風俗を鮮やかに描いている。
 その文章に、音楽的な面白さを覚えるのは僕だけではないはずだー
「続きて一団また一団、大蛇を籠に入れて荷者と、馬に跨りて行く曲馬芝居の座頭とを先に立てて、さまざまの動物と異形の人類が、絡繹として森蔭に列を成せるその状は、げに百鬼夜行一幅の活図なり。」

03.麦秋の波: 
鈴木大拙館の空間と氏の思想に触れて、これは音楽になると思った。いざ作り進めるうちに、内省的な世界観よりも大地を想起させる曲に成っていった。それは、人の手によって形成された自然の風景であり、誰もが聴いたことのある音である。

04.蛍:
金沢は戦火や大災害を免れたため日本の原風景が街に残っていると聞いた。中心に位置する兼六園ではいまも蛍が飛ぶ。福岡で育った僕には、都市と自然は発展の象徴として、切り離されていくものとしてと捉えている。双方が調和する金沢の在り方は、未来的でもあると感じられないだろうか。その想いを、親しみやすいメロディと新たなサウンドで表現したい。



【平原慎士/ Shinji Hirabaru】
ミュージシャン、プロデューサー、作曲家(Musician/Producer, Tokyo)
2022年度金沢市民芸術村レジデントアーティスト
UnlikeSoundProduction代表 

UnLike Sound Productionホームページ:
http://unlikesound.com

Youtube:
https://youtube.com/channel/UCg_Kb7o6eRcxr2X1MB3WtSg

note:
https://note.com/shinjihirabaru

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