最強短距離王サクラバクシンオー 〜名馬たちの記憶２〜
【名馬たちの記憶２】
最強短距離王サクラバクシンオー
サクラバクシンオーは、
生まれ持ってのスプリンターだった。
現役引退から、30年経った今でも
JRA史上最強のスプリンターと評価されている、短距離界を驀進した王についての記憶を呼び戻したい。
生涯成績は21戦11勝。
そのうち1400ｍ以下に限ると、12戦11勝と無類の強さを発揮した。
なお、唯一の敗北は、初のG1出走となった4歳時、暮れのスプリンターズステークス。
このレースには、
G1マイルチャンピオンシップを連覇したダイタクヘリオスが1番人気。
2番人気の桜花賞馬ニシノフラワーに続く3番人気に支持されるが、結果は6着だった。
逆に1400ｍ以上のレースは9戦0勝と全く勝てなかった。
これも最強スプリンターの宿命なのか。
しかし、
母サクラハゴロモは、天皇賞（春）と有馬記念、いわゆる中〜長距離G1を制したアンバーシャダイの全妹。
父サクラユタカオーも天皇賞（秋）を制している。
そして、
1歳上の従兄にあたるイブキマイカグラも1600ｍのG1を勝ったが、主に中〜長距離で活躍を見せた馬だった。
血統的には、父や叔父、従兄など一族が中〜長距離を得意とし、明らかに中距離向き。
当然、サクラバクシンオーも距離の長い方が良いのではないかと見られていた。
ここからは、彼の競走成績から記憶を振り返ってみたい。
3歳（現4歳）の1月にデビュー戦を迎えるが、なぜかダート戦だった。しかも距離は1200ｍである。
レースは、2番人気ながらもスタートから先頭に立ち、5馬身差の圧勝。
彼が経験した最初で最後のダート戦だった。
しかし、圧勝劇を見ると距離適性さえ合えば、芝でもダートでも関係なかったのかも知れない。
続く2戦目となった条件戦は、芝1600ｍだったが、2着と好走。
3戦目は芝1200ｍの条件戦とあってか逃げ切り快勝。
走破タイムが、同日同条件の古馬よりも0秒3も上回る好タイムだった。
デビューが遅かったものの、牡馬として生まれた以上、クラシックを目指すのは当然だろう。
4戦目を皐月賞トライアル、G2スプリングステークス（芝1800ｍ）に決める。
しかし、勝ったミホノブルボンに3秒5差の12着と大敗した。
このレースの大敗理由を
「蹄の形から滑る馬場は良くない。綺麗に脚を伸ばして走るので、敵は雨だよ」と調教師は、そう振り返った。
ちなみに、このレースでの4着は、のちの菊花賞馬ライスシャワーだった。
雨の理由もあった前走を見て、陣営は、この時点で中距離以上を断念。
それは、彼にとっても生涯一度のクラシック路線を断念することになる。
短距離路線に矛先を向けた次走に選ばれたのは、1200ｍのG3クリスタルカップ。
ここでも短距離適正を発揮。
3馬身差の圧勝劇を見せ、初重賞制覇となる。
しかし、次走1600ｍのG2ニュージーランドトロフィーでは、シンコウラブリイの7着に敗れてしまう。
その後、短距離界で徐々に頭角を現したサクラバクシンオーが、ついに父サクラユタカオーに初栄冠をプレゼントしたのが、
5歳（現4歳）で迎えたG1スプリンターズステークスだった。
この年の安田記念、天皇賞（秋）と3階級制覇のかかるヤマニンゼファーが1番人気と大きな壁が彼の前に立ちはだかった。
しかし、結果的には、2馬身半差を付けてG1初勝利。父サクラユタカオー産駒としてもG1初制覇となった。
なお、このレースには、
もう1つ感動的なエピソードがある。
それは、このレースの8日前、鞍上の小島太騎手がオヤジと慕ってきた馬主が死去された。
「絶対に負けられなかった。これまでの騎手人生で最高の仕事が出来た」
と小島太騎手は、レース後にそう語っている。
天国のオヤジにムスコの想いが届いたのは違いない。
翌年、連覇のかかるスプリンターズステークス。
勝敗に限らず、このレースを持って引退が決まっていた。
結果は4馬身差の圧勝、1分7秒1の日本レコード（当時）というおまけ付き。見事に連覇を達成した。
🐎画像number bunshunより🐎
G1スプリンターズステークスを2勝という勲章を持ち引退。種牡馬入りとなったわけだが、G1を2勝した競走馬は他にも多数存在する。
況してや、それ以上にG1を勝って種牡馬入りする名馬もいる中、なぜ彼が未だに史上最強スプリンターと呼ばれる理由。
1つは、
5歳の秋、1400ｍのG2スワンステークスにて、走破タイム1分19秒9を樹立。当時の日本レコードだった。
これは、2017年に更新されるまで23年間破られることがなかった大記録となった。
2つ目に
現役当時、1200ｍなら世界最強だったかも知れない。
それは、スプリンターズステークスを連覇した馬が、19年間現れなかったからである。
ちなみにロードカナロアが19年振りに連覇を成し得ている。
約20年もの記録を更新されなかった、この2点が、日本競馬史上最強スプリンターと呼ばれる理由かも知れない。
そして、引退後、第2の馬生を種牡馬として送り、この世を去るまでに残した産駒は1569頭。
2011年の4月、心不全にて没。
22歳だった。
なお、直仔もスプリンターが多く、彼と同じく1200ｍを得意とした。
該当距離の勝利数655（2012年7月までの時点）は、2位フジキセキ産駒の
312勝に2倍以上の差を付けている。
そして、種牡馬としては、
短距離〜マイルでのG1馬を3頭輩出
ショウナンカンプ（高松宮記念）
ビッグアーサー（高松宮記念）
グランプリボス（NHKマイルカップ）
と後継種牡馬を輩出している。
最後に
彼は、短距離馬だったにも関わらず、孫であるキタサンブラックが、中〜長距離のG1を7勝した。
これは、決して競馬は血統通りにはならない。
これこそが競馬の醍醐味、面白さだと言える孫の活躍だったと言えよう。
サクラバクシンオー
父 サクラユタカオー
母 サクラハゴロモ
母の父ノーザンテースト
21戦11勝
主な勝鞍 スプリンターズステークス（G1）2回
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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