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【妖怪百科】雪女

 小泉八雲の怪談に書かれている雪女について。大まかなあらすじは、山で吹雪に見舞われた親子が山小屋で夜を過ごす。夜中戸が開き女が入ってくる。父は寝ている。女は父の元へ行く。続いて息子のところに来る。息子は起きている。女は若い男を気に入り里に帰っても今夜のことは誰にも言わないことを条件に男に何もしない。翌朝父は死んでおり息子は生き残る。しばらくたって息子は美しい娘と出会い結婚する。幸せに暮らし子供もたくさんできる。あるきっかけで男は妻に雪山での話をする。妻は実は雪女だった。雪女は誰かに話せば殺すと言っていたが、子供もいるので、しっかり育てるよう男に申し付けどこかに消える。

 さて、いろいろな疑問が出てくる。たとえば鶴の恩返しの場合、助けてもらった鶴が人間の娘に化け恩返しをする。正体がバレると消える。この手の話はスズメだとか、狐だとかいくつかバリエーションがあり、小さな命を粗末にしないといった教訓や、困っているものを助けるといった慈愛の大切さなど何かしら説得材料がある。さらには助けたおじいさんやおばあさんに主体性があり、とても良い性質を持った人間だ。それに比べると雪女はいささか不合理だ。父を殺める凶暴性を持ち、たまたま気に入った息子を縛り付きで解放し、さらには結婚してしまう。この息子に主体性はない。若く雪女好みの男前だったのだろう。雪女は子供まで作る能力がある。いい感じで結婚生活を送り幸福に見えるが、なぜかある晩、男を煽るような誘導尋問で雪山の話を話させてしまう。その話はやめておけといえばいいのに、自ら結婚の破綻を招くような行為に出る。さらには、殺すという縛りを自分で破り、子供を置いて去ってしまう。なかなかの支離滅裂さだ。この手の話によくある後日談として、その子供たちはやたらと力持ちになったとか、神通力を持っているだとか妖怪と人間のハーフならではの優位性も語られない。結局雪女騒動に若い男が巻き込まれた顛末となる。

 本来ならば親子揃って遭難、凍死だったはずを雪女が救ったのだろうか?あるいは、雪女が遭難の原因となった吹雪の発生も含め支配しているのだろうか?実際に起きたことは、遭難した親子のうち若くて体力もある息子は助かったが父は死んだ。それだけの話が雪山の恐怖や、山神といった得体の知れない力と関連づけられ、彼が助かったのは雪女に気に入られたからだと理解されたのだろう。しかしながら、気に入られ生き残った後の話が、なんとも奇妙に語られたものだ。

 その後雪女は「ゲゲゲの鬼太郎」(特に5期)などを代表に、「地獄先生ぬーべー」なんかにも重要なキャラとして登場し、女妖怪として独自の地位を築き上げている。



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