廃タイヤリサイクルの現状とこれから

〇日本でのタイヤリサイクルの現状はどうか

 日本では年間9,100万本、重量にして98万トンのタイヤが廃棄されている(2021年)。ブリジストンの調査によると回収率は94%で非常に高い。しかし、そのうち一番割合が大きいのがサーマルリサイクルで64%を占めるのが現状である。

サーマルリサイクルとは燃料として燃やしてカロリーを取り出す方法だ。英語ではリサイクルという言葉は使わず、Energy Recoveryと表現したりする。このサーマルリサイクルはリサイクルの定義や解釈の問題で欧米とは違う。例えば、日本のプラスチックのリサイクルは8割を超えており非常に高いが、これにはカラクリがある。欧米では通常リサイクルに含まれないサーマルリサイクルが含まれており、日本ではサーマルリサイクルが6割程度を占めるのである。つまり、サーマルリサイクルは、リサイクル処理が困難な素材の緊急避難的なリサイクル方法なのである。

 

〇世界ではどのようにリサイクルされているか

 では世界ではどのようにタイヤはリサイクルされているのか。少々年代は国により異なるが、日本、米国、欧州で比較してみた。

 日本では、2017年時点でタイヤの回収率は103万トンで回収率は93%、そのうちサーマルリサイクルが63%、マテリアルリサイクルが13%である。米国では、2016年時点でタイヤの回収率が419万トンで回収率が81%、そのうちサーマルリサイクルが43%、マテリアルリサイクルが33%だ。最後に欧州では、2016年時点で回収率が390万トンで回収率が94%、そのうちサーマルリサイクルで12%、マテリアルリサイクルで49%である。日本は米国や欧州と比較して非常にサーマルリサイクルの割合が高いことがわかる。サーマルリサイクルを欧米並みに合わせれば、日本の廃タイヤのリサイクル率は7割を切ってしまうだろう。サーマルリサイクルを減らしつつ高いリサイクルを維持していくのが日本の課題なのである。

 

〇タイヤとはどんな原料なのか。

 タイヤといっても主なモノでもTBタイヤ(Truck & Bus、バス・トラック由来のタイヤ)、PCタイヤ(Passenger Car、乗用車由来のタイヤ)、MCタイヤ(Motorcycle、バイク由来のタイヤ)などがある。タイヤの構造は複雑で、いろんな層からなっており、マテリアルリサイクルは大変な作業がいる。中にはリードワイヤのような鉄の素材まではいっている。主な成分は天然ゴムが、合成ゴム、カーボンブラック・シリカがそれぞれ2-3割含まれておりこれらで7割以上を占める。廃タイヤは大量にまとまって発生するのだが、国内での再利用や中古タイヤとして輸出されるものは別として材料を適切にリサイクルするのは、複雑な構造もあり意外と難しいのである。

 

〇サーマルリサイクルとは

 主に小さなサイズに切断されたのちに製紙会社やセメント会社の産業用ボイラーで使用される。燃焼後はリードワイヤなどの鉄分が残るがこれらは、逆有償で引き取られるか有価で引き取られ電炉のような鉄鋼メーカーで原料として使用される。

 

〇マテリアルリサイクルとは

 リサイクルの方法としては大きく分けて2つになる。破砕して用途に合ったサイズにして再利用する方法と、脱硫して再生する方法の2つである。

 破砕する方法は1-3mm程度の比較的大きなサイズであればカッター粉砕、1mm以下の細かいサイズであればロール粉砕が行われる。

 脱硫再生はパン法と二軸破砕法がある。これらの設備の投資には破砕する方法よりコストがかかる。また、脱硫を繰り返し行うと劣化するため3回程度の脱硫が限度とされている。

 

〇新しいイノベーションとは

 他のリサイクルと同様にリサイクルの技術開発も行われている。最近話題になっているのが、ブリジストンとエネオスが行っているケミカルリサイクルである。廃タイヤを熱分解して油化し、精製したうえでブタジエン等を取り出し化学品にするというものである。まだ実証段階ではあるが、2050年には日本の年間廃タイヤの6割程度である年間60万トンをケミカルリサイクルするという野心的な目標を掲げている。さらにこれにより二酸化炭素の排出を年間146万トン削減できるようだ。商業ベースで油化し再生するには大規模な数量と設備が必要なのでエネオスと組んで大掛かりに取り組んでいるのであろう。

 廃タイヤはエンジン自動車が電気自動車に代わっても発生するものである。プラスチックと同様にリサイクルの課題も多い。今後もブリジストンのようなイノベーションに期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?