第39話 「ウスケボーイズ」

(松本市民タイムス リレーコラム 2018年11月15日掲載分)


皆さんは「国産ワイン」と「日本ワイン」、2つの言葉の違いをご存知でしょうか。

聞きかじりの知識で恐縮ですが、耳馴染みのある「国産ワイン」という呼称は、実は純国産ワインだけではなく海外から輸入された果汁を使って国内で醸造したワインや、海外産のワインとミックスして瓶詰めしたものにも適用されていたそうです。

もちろん国内産のぶどうの果汁のみを使ったものもありましたが、それらの間に明確な区別はなく、消費者からすれば非常に分かりにくい状態でした。

そんな状況の中で純国産のワインをきちんと区別しようという流れが生まれ、ワイン業界の皆さんの努力で「日本ワイン」という言葉が『日本国内で栽培されたぶどうを100%使い、日本国内で醸造されたワイン』と定義されました。
法的にはつい2週間ほど前の10月30日から「国内製造ワイン」の中のカテゴリーとしてラベルへの表示にぶどうの生産地や種類、そして「日本ワイン」という言葉が記載できるようになったそうです。ワインを楽しむ人達にとっては興味深いニュースですし、ワイン醸造に携わる人にとっても励みになることだと思います。

先日、塩尻市の東座で「ウスケボーイズ」という映画を観てきました。

日本のワイン作りのレベルを上げることに貢献した醸造家、麻井宇介(うすけ)氏と、その思想の薫陶を受けたワイン造りを目指す若者達が醸造家として成長し成功するまでを、実話に基づいて描いた作品です。

映画の中で重要な役割を果たすのが、塩尻市の桔梗ヶ原で作られたワイン。
桔梗ヶ原は日照時間が長く、土が火山灰質でブドウ作りに向いているために昔からワイン用、生食用共にたくさんの優れた葡萄が生産されている地域です。

登場する若手醸造家三羽烏(ウスケボーイズ)のうちのひとり城戸亜紀人さんは実際に桔梗ヶ原でワイナリーを営み、素晴らしいワインを作られています。地元塩尻でも今や彼のワインを手に入れるのは至難の技。抽選でしか手に入らない状態です。僕も幸運にも何度か城戸ワインをいただく機会に恵まれましたが、その奥深い味わいに感激しました。

醸造家自らが畑でブドウの苗を植えるところから始め、厳しい自然を相手に真摯にブドウ作りワイン作りに向き合う姿は心を打たれます。
薫陶と言うのは高い志を持つ人に感化されることと思いますが、情熱を共有する若い世代がいて志が受け継がれて行くのは素晴らしい事です。
上映期間も短いと思いますがぜひ皆さんに観ていただきたい映画です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?