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雲の恋人から


​ひだまりに寝そべる猫のあくび
冬の午後
ある男の物語がさいしょの本となる
くらがりのバー
ウォッカからはじまる
複数の名前をきこんだ男の
ミステリー
ぼくはきみの声が聴きたくなる
そこにいる
ずっとそばにいる
甘える猫のようになって
南に逃げる男にかさなっていく
くらい井戸のなかの音楽
ぼくはきみの声が聴きたくなる


駅までの道をゆっくりと歩く
カフェにたちより本のつづきを
本屋でながめる
惑星の休日
だれにも時間をわたさない
できるだけゆっくり
もしゃもしゃ髪の女の子の影をおって
亀よりもゆっくりと
駅までの道を


さいしょのキスを
地下のバーに降りて行く階段で
きみに
とびっきり甘いラム酒のような
さいしょのキスを


花のいろをちらせて
器に湯をそそぎ
くるくると泡だてていく
とうめいな影をあやつるように
衣擦れの声
空気が床をながれる
きみのつくる時間を
ひかる雨にぬれるように
のみほそう

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