雲の恋人から
1
ひだまりに寝そべる猫のあくび
冬の午後
ある男の物語がさいしょの本となる
くらがりのバー
ウォッカからはじまる
複数の名前をきこんだ男の
ミステリー
ぼくはきみの声が聴きたくなる
そこにいる
ずっとそばにいる
甘える猫のようになって
南に逃げる男にかさなっていく
くらい井戸のなかの音楽
ぼくはきみの声が聴きたくなる
2
駅までの道をゆっくりと歩く
カフェにたちより本のつづきを
本屋でながめる
惑星の休日
だれにも時間をわたさない
できるだけゆっくり
もしゃもしゃ髪の女の子の影をおって
亀よりもゆっくりと
駅までの道を
3
さいしょのキスを
地下のバーに降りて行く階段で
きみに
とびっきり甘いラム酒のような
さいしょのキスを
4
花のいろをちらせて
器に湯をそそぎ
くるくると泡だてていく
とうめいな影をあやつるように
衣擦れの声
空気が床をながれる
きみのつくる時間を
ひかる雨にぬれるように
のみほそう
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