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ツエーゲン金沢での3年間

私はプロサッカー選手として11年間、5クラブでプレーさせて頂きました。

現在、ツエーゲン金沢のクラブアンバサダーとして働いている事もありツエーゲンでの選手としての3年間を振り返りたいと思います。

2014シーズン

以前の記事をみて頂ければ分かりますが約2ヶ月半の無所属期間を経て3月中旬にツエーゲン金沢に加入が決まりました。J3初年度、既に2試合が消化している時期でした。

初めて練習参加した時にまず驚いた事は練習するピッチはカチカチの人工芝、シャワーはみんなで1つ、と言った環境面。今までいかに恵まれていた事かと思いましたがそんな環境でも仲間とサッカー出来る喜びを感じました。

そして練習の雰囲気にも少し驚き、まだまだ本気でJ2を目指すんだというチーム内の熱量は足りなかったと思いました。

当時在籍していた選手の中でアマチュアの選手が半数、Jリーグ経験者も数える程でしたので皆が同じ意識で取り組む事は難しかったのかもしれません。ただクラブとしてはJ3とはいえプロサッカークラブ。このまままではJ2昇格は厳しいだろうというのが率直な思いでした。

私は加入する時に2つの目標を立てました。

『このクラブを絶対にJ2へ昇格させる事』
『もう一度J1でプレーする事』

達成出来なければこのシーズンで引退しようという覚悟で新たなシーズンに臨みました。

当時私の感覚でチーム力は町田、長野、鳥取に次いで金沢だったかなと思います。

森下監督率いる我々は試合をこなす毎にスタイルを構築し、勝利を重ねる毎に自信を得て強くなっていきました。チーム内のも少しずつではありましたが厳しさも出てきて「絶対J2に昇格するぞ」という雰囲気に。

サポーターの皆さんも試合毎に増えてシーズン終盤にはスタジアム全体に「J2昇格」の空気を感じたのを覚えています。

そして最後は13試合負けなしでJ3優勝。
「J2昇格」の切符を手に入れました。

余談ですが、ホーム最終節SC相模原戦で私はゴールを決める事が出来ました。
後半アディッショナルタイム、得意な場所からのFK、ゴールと共に試合終了。
こんな事あるんだなぁと。1年間真摯にサッカーと向き合いクラブの為にプレーした自分に神様からのご褒美を頂いた気分でした...。

2015シーズン

ツエーゲン金沢に加入した時に立てた2つの目標の内、1つは達成しましたが2つ目の目標であった「J1でプレーする事」は叶いませんでした...。目標は達成出来かった訳ですから本来ここで引退するはずでしたがまだ選手としてやり残した事があったのでプレーする事を決めました。

2015シーズン、昨年J3優勝した勢いそのままに前半戦の快進撃。5/3の水戸戦で首位に立ちました。当時、J1ライセンスがありませんでしたが行政やスポンサー企業、サポーターの皆さんのご尽力でクラブハウスと練習場の建設が計画され、J1ライセンス取得に至ります。

この時、「このクラブを昇格させればJ1でまたプレーできる」と思ったのを覚えています。

一時首位には立ったもののJ2はそう甘くありません。我々のチームスタイルを分析され後半戦以降なかなか勝つ事が出来ません。
古巣大分トリニータとの試合で20試合振りの勝利、J2残留を決めJ2初年度は12位でシーズンを終了。

序盤戦の快進撃、そして中盤戦以降の苦戦を強いられた戦いは非常に良い経験となりました。

2016シーズン

ご存知の方も多いかと思いますがツエーゲン金沢史上1番と言っていい程、クラブとして苦しかったシーズンではないかと思います。そして、個人的にも本当に苦しかったシーズンでした...。

今のクラブハウスが完成し、練習場も点々とする事はほぼ無くなりました。新加入で熊谷アンドリュー(現・千葉)や馬渡(現・湘南)が加入し、チーム内の競争も激しくなりました。環境面、そして戦力的にもプロクラブらしくなっていきました。

私自身、もう一度J1でプレーしたいという思いは変わらずこのクラブをJ1に昇格させると胸に抱き臨んだシーズンでした。

ところが昨シーズンとは違い、序盤戦から大苦戦。初勝利を挙げたのが12節の山口戦、そこからも苦しい戦いをしいられました。

個人的にも中盤戦以降はスタメンを外れる事が多く、メンバーにも入る事もままならなくなりました。

そんな中、久しぶりのスタメンだったアウェイ東京V戦。ここで自分の力が発揮出来なければ引退するという思いで試合に臨みました。

結果は1ー4。めちゃくちゃ悔しかった気持ちと自分がゴールを決めれた事、そして身体もまだまだ動くしチームの力になれるぞという自信を抱いたのを覚えています。

その後、チームは終盤戦まで残留争い、21位で入れ替え戦へ。私もスタメンを掴むことなくリーグ戦を終了します。

運命の入れ替え戦

栃木SCとの入れ替え戦。第一戦、第二戦ともにメンバー外。
第一戦はアウェイで1-0勝利。

そして運命の第二戦、諸事情で富山で開催。

メンバー外の選手を乗せたバスでスタジアムへ向かいます。

メンバー外になった私はチームの力になれない自分が情けなく、悔しくてたまりませんでした。

2016シーズン限りでの契約満了を伝えられていた私は正直、心のどこかに「試合の勝敗はどっちでもいいや」という気持ちが恥ずかながら少しあったと思います。

スタジアムに到着してロッカーへと向かう途中、森下監督に呼び止められ手紙を渡されます。

「モリさんから手紙?なんだろう?」
中身を見てると妻からの手紙でした。

家族がいる全選手に対して選手が居ない時間帯にわざわざマネージャーが家に訪問して奥さんや子供に手紙を書いてもらうというサプライズ。試合に出る選手達はロッカーアウトの前に渡されたそうです。

このサプライズに「あぁ、この監督の元でプレー良かったな」と。涙を堪えてスタンドに向かいます。

そこで見た風景は富山開催にも関わらずゴール裏を埋め尽くすツエーゲン金沢サポーター。

堪えていた涙が溢れ出ました。

私が2014年ツエーゲンで初めて試合に出場した試合では福井開催で700人。

そして、この日は富山開催で7000人を超えるサポーター。

このクラブの為に戦った3年間を誇りに思えた瞬間でした。

試合は2-0で勝利。
無事にJ2残留を決め、試合に出ていた仲間の元へ。
まだ死闘の熱さが残るピッチに入るとやっぱり試合に出れなかった事への悔しい気持ちとツエーゲンでもうプレー出来ない寂しさと残留の安堵の気持ちが織り混ざり複雑な心境でした。

最後に

ツエーゲン金沢に加入して約3年間。

所属先が決まらない私に手を差し伸べてくれたツエーゲン金沢。

このクラブに対する感謝を抱いてクラブと共に成長出来た3年間は自分の人生にとってかけがえのない時間となりました。

クラブスタッフとして働く今、選手の時に達成出来なかった

『J1昇格』

を目標に地域、サポーターの皆様、パートナー企業の皆様と共に更に成長し、石川県をサッカーの力で元気にしていきたいと思います。

長くなりましたが読んで頂き有難うございました。









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