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イレギュラーの採用

十五年ほど前、最初の結婚生活を終わりにしたタイミングで自分の人生に変化を与えるようなことをしようと決意した。
表題にあるとおりなのだけど、そんな大げさなことでもなく、僕が実行したのは本当に身の回りの小さなことからだった。

何かの記事などで見聞きした、人の記憶は習慣づいたものほど取り出しにくい、よって朝家を出るときに鍵かけたかな?とか瞬時には確証を持てない。
これを逆手にとる方法で、例えば鍵をかける手を利き手じゃない手で行うことなどだ。普段やらない行為が違和感となって記憶に鮮明に刻まれるという仕組みだ。
このことから、慣れ親しんだことよりも違和感のある体験が我々の心に深く刻まれることがわかる。

話をもどして、その当時実際に僕がやったことの例を挙げると、

  • 映画を観るとき行き慣れた劇場をパスして遠方の劇場を選ぶ。

  • 自ら選んで入らないであろう寂れたスナックに一人で入る。

  • 真冬の夜中大きな公園に忍び込み芝生に寝転がり星を見る

  • 嫌いな作家の本を読む

  • 思い立ってその日のうちに旅に出る

などなど、上げればきりがない細かなことが多く、すこし面倒でも実現不可なほどカロリーの高いことはひとつもない。
そしてそれらの行動が生むまた別のイレギュラーから違う小さな旅が始まったことも一度や二度ではない。

僕の経験の範疇に限るけど、人生って多かれ少なかれ繰り返しのループで構成されている。どこかで思い切って何かを大きく変えられるひとは案外少ない。そうだとするならば日々の生活の中で人生の軌道を少しだけ変えられるような変化は自ら生み出さないといけないと思うのだ。

リスクを伴うことも中にはあるけれど、ぼくはかの岡本太郎の言葉を自分なりに解釈、意訳して引用している。

「選択肢がある場合、迷わず危険なものを選べ」

その心は、危険であると認知しているにも関わらず選択肢のひとつに残している時点で己が最も魅力を感じているからだ。

さ、今日もイレギュラーを採用しよう。

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