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UNSUNG HEROES ー Vol.4_川原 佑

アンサング・ヒーローズ。名も無きヒーローたち。シャイニングアークスにも、普段スポットライトを浴びることなく選手を陰で支える、縁の下の力持ちとも言えるスタッフがたくさんいます。そんな彼らに、少し陽の当たる場所に出てきてもらうシリーズ企画です。第四回目の登場は、レフリー・普及担当の川原佑氏。

高校の時の怪我で選手生活を諦める

5歳からラグビーを始めました。そこからずーっとラグビーを続けていましたが、高校2年生の春に膝を怪我して手術を三回しました。1年間プレーできなかったのですが、その時に医師から今後選手生活を続けることは厳しいんじゃないかと言われました。でも高校卒業まではどうにか選手としてやっていました。

ただ高校卒業後は選手ではない形でラグビーと関わりたいと考え、監督や部長に相談したところレフリーを勧められて、それから始めました。

明治大学に進学してラグビー部に入部し、1年目はマネージャーの仕事もしながら、2年目からはコーチのサポートとレフリーとして活動していました。レフリーとしては、大学4年の時に大学対抗戦やリーグ戦の他、全国高校ラグビー大会(花園)も担当させていただきました。

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NTTコム入社後も2年間はレフリー以外の仕事を担当

大学卒業後の進路を決める際には、地元に帰って国語の教員になることも考えましたが、卒業後もレフリーを続けていきたいと考えを決め、ラグビーに理解のあると思われる企業を探して、いくつか入社試験を受けました。その中で、当時明治大学ラグビー部に選手リクルートのため訪れていた黒木さんや内山さんと話す機会もあり、入社後ラグビー部で働くチャンスもあると聞いて、新卒で2015年にNTTコムに入社しました。

1年目はラグビーと全く関係無い仕事をしていました。システム部で社内音声システムの保守・運用を担当したのですが、文学部出身だったので苦労しました。今ではいい経験だったと思っていますが(笑)。当時も、黒木さんや内山さん、そしてラグビー部部長や上司にも理解をいただいてサポートしてもらい、日本協会からレフリーとして海外遠征の派遣依頼があれば、快く送り出していただき参加させてもらっていました。

そして入社2年目となる2016年の7月に広報・普及担当として入部しました。その年はメディア対応とか原稿を書いたり学校に行ってラグビー教室を開いたりしていました。3年目からラグビー部所属レフリーとして活動し始めました。 

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シーズン中の1週間の過ごし方

シーズンに入るとほぼ毎週土日のどちらかの日に笛を吹いて、もう1日は旗を振る(アシスタントレフリー担当)という感じです。土曜日に福岡で笛を吹いて、日曜日に大阪で旗を振って東京に帰るというような生活になります。

月曜日は、土日の試合レビューをして、それが終われば他の試合のチェックをします。

火曜日と水曜日には、レフリー関係者ミーティングがあります。また、試合を担当したチームから質問が入って、その対応をすることもあります。

水曜日の午後からは、次の試合に向けた準備をします。両チームの直近の試合を2試合分程度チェックします。

木曜日は、どういうゲームになりそうか、どういうポイントを抑えておくべきかなどをまとめて、次の試合を担当するアシスタントレフリーと情報共有します。

そして金曜日は、試合会場への移動などにあてたりビデオを見たりして、土日の試合に望みます。

週の合間には、フィジカルやフィットネスのトレーニングをしています。ですからシーズン中はほぼ休みが無く、移動時間も参考映像を見ておきたい感じです。

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シーズン前の今の過ごし方は?

9月ぐらいから忙しくなっていく感じですね。11月の今はもう大学シーズンが始まっていますので、僕の場合は2週間に一回ぐらいレフリーを担当しています。また毎週水曜日の夜9時から、関東の大学とリーグ戦を吹いているレフリー20名ぐらいでオンラインミーティングがあります。それと日本協会のトップリーグに向けた宿泊でのキャンプが月一回あります。あと今のうちに走り込んでおかないとトップリーグシーズン中もたないので、週5回ウェイトトレーニングやフィットネストレーニングをやっています。シャイニングアークス元S&Cコーチの奥野純平さんが日本協会と契約して、今レフリーのS&Cを担当していてトレーニングメニューをもらうのですが、めっちゃきついです(笑)。

チーム練習時には、選手やコーチたちにレフリングへの理解を深めてもらっています。シャイニングアークスの試合があるときはレビューをして、月曜日にはコーチ陣に共有して、なぜこの反則が起きたかなど話をして練習に反映させてもらいます。

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レフリーの面白さ、そしていいレフリーとは?

ラグビーの理解を深めながら、いいプレーを近くで見ることができたり、その中でターンオーバーが起きたり、ボールがよく動くような見ていて面白い試合になった時にはすごくよかったなあと思います。基本的には目立たない存在だと思うのですが、観客の皆さんが面白いと思う試合は、笛を吹いているレフリーもやはり面白いと感じます。いいレフリーがいなかったら、みんなが求める面白い試合にはなりにくんじゃないかと思っています。そこには実力が問われるところだと思いますし、やりがいを感じます。

あとゲームの前にチームに行ってコミュニケーションを取ったり、試合中に選手とコミュニケ―ションを取りながら解決をして次の展開につなげていけるところも、ラグビーのレフリーならではの良い文化なのではと思います。ルールに書いてなくても、フェアネスという側面からそもそもダメだよねということも、ラグビーの文化にはたくさんあります。今は勝利のためにラグビーの文化を蔑ろにしてしまう側面もあるので、それに対してルールが増えていく傾向は感じています。それでもロウ(LAW。原理原則)を大切にする想いはラグビーにはあると思います。 

ゲームの温度感だったりだとか、選手たちの想いをある程度汲み取るような笛を吹きたいと思っています。みんなが見て「そうだよね」だとか「これは良いプレーだよね」というような展開ができるだけ増えるようにしたいです。例えばペナルティの笛を吹いた時に、みんなが「そうだよね」と感じて欲しい。笛を吹いた時に、50人が納得して50 人が納得できないというようなレフリングは正しく無いと思っています。

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チーム所属レフリーとして

すごくいい環境があって、いい人たちがいて、いい指導者やマネージメントスタッフがいますので、自分は恵まれていると思っています。頑張れば頑張るだけ、まだ見ていない世界を見ることができるからやり続けることができているのだと感じています。今まで見えなかったものが見えた時に、新たなインプットをチームにシェアしていきたいです。それでまたチームが強くなれればと。少しでも力になりたいと思っています。

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