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【エフェクター編】イコライザー

もうこれは乱用ばかりを目にします。カーオーディオやスピーカーなど、環境によって適切なイコライジングが必要であることは理解できますが、それこそ熟練のライブPAでなければ、環境に合わせたイコライジングは不可能でしょう。筆者の専門分野は音源制作ですので、その視点からイコライザーとは何ぞやということを解説します。

位相をずらして特性を変える道具

リニアフェイズ以外のイコライザーは全て位相をずらします。位相がずれるということは、原音の波形を留めない=歪むということです。ギターのオーバードライブやディストーションでいうところの歪みとは少々意味合いが異なりますが、原音ではなくなるという点では同じです。

失敗を補完する道具

それでもレコーディングで捉えきれなかった高域が必要になったり、ドラマーのチューニングの失敗で極端なイコライジングが求められることもあります。本来はレコーディングからやり直すべきですが、予算などの事情でミックスでどうにかしてくれということも少なくありません。そういった失敗を補完する道具であり、ミックスダウンにおいて積極的にイコライザーを用いることはありません。

使うならリニアフェイズでピーキングのみ

帯域の固定されたイコライザーで音を完成させることはできません。狙った帯域を制御できないからです。また、ローシェルフ(基準値より下全域)やハイシェルフ(基準値より上全域)も使いません。それらが必要となるトラックは、ミックスで補正不可能なほどに失敗していることを意味します。
Q値は1オクターブ(1.41)では狭過ぎます。2オクターブ(0.7)くらいから、ようやく自然なイコライジングと言えます。狙った帯域をピーキングで最小限に、かつ不自然ではない程度にしか使用しません。
それでも位相は破壊したくないため、リニアフェイズを用います。

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Waves Linear Phase EQ によるピーキングイコライジング

ヴィンテージ?巨大コンソール?モデリング?

「名機と呼ばれたイコライザーを完全モデリング」「巨大コンソールのEQをプラグイン化」
といったコピーで売られているイコライザーが多数存在します。興味があればデモバージョンを使ってみてください。大抵うまくいきません。それらがダメだったから、改良した新しいイコライザーが開発されている訳で、帯域が狙えて位相もずれない時代に、狙えず歪む道具を使う理由は「オールディーズ風劣化音源」を作る以外にはありません。
特に某巨大コンソールのイコライザー部は、コントロールする帯域の上下が勝手に変化するという特性があります。例えば1KHzをブーストすると、500Hzや2KHzといった部分が勝手にカットされます。そんなイコライザーを信用して使えるでしょうか...。

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