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方向性を模索する米国AMRメーカー

 先月(2021年7月) 1日にシリコンバレーの自律移動ロボット(AMR) メーカーのベンチャー Fetch Robotics社の、サプライチェーンなどの自動化に取り組むイリノイ州の SIer、Zebra Technologies社による買収が発表されました。Willow Garageから独立し AMR市場をリードしてきたシリコンバレーのベンチャーの買収はとてもショッキングでした。Fetch Robotics社は Zebra Technologies社の QRコード システムとの統合をはじめ Warehouse Management System (WMS) とのインテグレーションにおいて協業してきていましたが、今回の Fetch Robotics社の買収はサプライチェーンや製造業界における AMRの位置づけが変化しつつあることを表しているように思います。

 この数年、Fetch Robotics社は倉庫業務や製造現場への AMRのアプローチを加速しており、産業用 AMR 安全規格 (ANSI/RIA R15.08) にも大きな貢献をし、昨年初め頃からインテグレーターとの協業を活発に進めてきていました。そしてこのひと月は毎週のようにインテグレーターとの協業が発表されてきています。7月27日にはドイツの物流系大手SIer の Körber社とのパートナーシップを発表、Körber社の倉庫管理システム(WMS) と AMRを自動化ソリューションとして統合を目指しています。8月4日にはフルフィルメントセンターや配送センター向けの倉庫最適化ソフトウェアを提供する Lucas Systems社と次世代のスマート倉庫を実現するパートナーシップを発表し、両社はこのパートナーシップを通じて Fetch社の AMR と倉庫作業員の調和のとれた関わり方を組織化し、最適化するためのソリューションの提供を目指すものです。

 さらに Fetch Robotics社は 2021年8月にフルフィルメントセンターや配送センター向けの倉庫最適化ソフトウェアを提供しているボストンの米Locus Robotics社との次世代スマート倉庫を実現するパートナーシップを発表しました。両社はこのパートナーシップを通じて、Fetch Robotics社の AMRと倉庫作業員の調和のとれた関わり方を組織化し、最適化するためのソリューションを提供することを目指しています。
Locus Robotics社は特殊分野の AMR開発を得意とする米Waypoint Robotics社の買収も発表しています。Waypoint Robotics社は軍事用途を含め過酷な環境で動作する AMRの開発を得意としており、両社が合併することでより幅広い用途向けの AMR開発が加速するものと思われます。

 最近の Fetch Robotics社の動きをみていて事業化に本腰を入れ始めた印象ではありますが、AMRの今後の一つの方向性を示しているように思います。AMRは状況に柔軟に適応できる機能を備えてはいますが、一台一台の AMRが処理できる物量には限界があります。大量の部品や荷物を捌くには既存の物流ソリューションや現場の状況との統合が不可欠であり、Fetch Robotics社は新たなフェーズに進んだとみています。最近では Fleet Managementによる多数の AMRを統合制御する仕組みも登場し AMRの導入規模は大きくなってきていますが、しかし機械個体数が増えれば故障や保守などメンテナンスに要する時間やリソースも比例して増えます。サプライチェーンや映像業に浸透し始めた AMRにはソリューション全体としての TCO (Total Cost of Ownership) の概念と、AMRのライフサイクル マネジメントを導入前から意識する必要があると思います。

 AMR分野のリーダーである Fetch Robotics社からは今後も目が離せません。

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