持続可能な建築を学びにヨーロッパへ。
東北芸術工科大学の竹内昌義さん率いる、株式会社エネルギーとまちづくり社さん主催のヨーロッパ研修に参加。ご一緒いただいた皆様ありがとうございました!
そして誘ってくれた株式会社ホリエ社長の龍ちゃんに感謝!
スイス、オーストリアではエネルギーとパッシブ基準、まちづくり、村づくりを見学し、ドイツではVitra Campus(ヴィトラキャンパス)へ
トランジットで行きはドバイと帰りはイスタンブールを経由だったのでせっかくだからドバイに2日、イスタンブールに1日滞在し、ヨーロッパを含めると合計10日間ほどの研修。本当にたくさんの建築を見てその場所を体験をした。
今回の研修は衝撃とヒントをたくさんいただいた。
正直、ドバイはかすんで次は行かなくてもいいかなと思うくらいスイスとオーストリア、ドイツが驚愕だった。イスタンブールは歴史をもっと深く知りたいのとスタグフレーションが今後どうなるか知りたいのでまた行きたい。
せっかくなので自分の頭の中の整理と社員向け、SIAオンラインサロンでのmtgに先立ちnoteにもまとめてみた。
①森林を資源としてそして共存のためにみんなで真剣に考え持続可能な森林づくりをしていたこと。再造林は当たり前。100年後の未来のために森林資源を残す。
②自然環境に対する考え方が日本のはるか先!!再エネ100%の実施、本気で化石燃料からの脱却に向けての取り組み
③木造建築の可能性、景観条例・建築協定の重要性に感銘を受け学びそして、広葉樹特にブナの使い方に非常に感銘とヒントを受けた。
うわっつらじゃない木材の利用と一次産業、2次産業の重要性を痛感。
④案内してくれた滝川さんと建築家ヘルマン・カウフマン氏はじめ建築家フランツ・シュニーダー氏、建築家アンディ・セン氏と校長マルクス・ホビ氏、ラングネック村行政マリオ・ヌスバウマー氏、e5を教えてくれた所長マルティン・ライス氏、各プログラムの担当者さん、建設協同組合 GWG 経営者アンドレアス・シーゲンターラー氏他、建築家ヤニーナ・フリュッキガー氏(Zirkular 社)、バーゼルの局長マティアス・ナブホルツ氏他、住民で自治 NPO 担当者・建築家フランツ・ハンドリク氏 他アーティストの皆様には感謝しかない。滝川さんが同時通訳してくれたから学びの量がめちゃくちゃ多かった。
④5か国をまわり、物価とその国の勢いと政策の違いでここまで差がでるのか。と衝撃!!
ここからは具体的に勉強になったことを。
まずは今回の研修先のスイス、オーストリアの西部(ブレゲンツの森地方、フォーアールベルク州)は日本のはるか先をいっていた。
■全てにおいて対話、住民投票で決める。だからなのかその住民の環境に対しての意識がとても高い。そして化石燃料の脱却向けて市民・行政が一体となって取り組んでいて、CO2排出量が多い解体・新築はなるべく選択しない。新築する場合はパッシブ基準(断熱製めちゃ高い)
■市民と行政にいる人の民度とデザインリテラシーが高く、建築、インテリア、ファッションなど含め、デザインに対する意識レベルがめちゃくちゃ高い。行政の人のデザインに対する意識が高いので大型建築はコンペだがコンペ自体がデザインだけでなく環境に対して、その後の用途について、そしてライフサイクルコストの安いものが選ばれる。日本のように建てたけど運営は赤字です。用途もそんなにないです。税金使います。ではない。いいすぎか。
■なんてったって建物断熱性能が高い。日本と比較して湿度が低く、湿気対策はあまり考えなくて良い。研修に行くまでは調べたら冬は新潟と同じくらいの気温と雪の感じだったけど風がないし基本建物の中はどこに行ってもあったかいので新潟よりも快適。今年は日本同様温暖化で雪がなかった。通常はフォーアルベルク州は70センチくらいあるんだそう。夏の湿度も結構あるかと思いきや夏は涼しい。で、夏は涼しいから、エアコンによる冷房は考えなくて良くて、暖房はなんと地域熱供給や地中熱供給で賄う地域も多い。驚愕!!
ここはスイスのバーゼル、オーストリアのフォーアールベルク州がそうだった。チューリッヒで泊まった古民家の宿もパネルヒーターで快適だった。
バーゼル市の持続可能な再開発地区エルレンマット東地区の事例をここに。
2000W 社会型エリア、ミネルギー建築。600 人賃貸。住民 NPO による案内。持 続可能な再開発のためのマスタープランに従い、様々な協同組合や施主が集 合住宅を実現。住民・社会層混在、省エネ建築、車のない交通コンセプト、 住民自治、コミュニティ創出、市民エネルギーによる 100%再エネ熱・電力 供給、住宅内見学可能。太陽光 750kW の自家消費。1 棟(アーチストの家) は無暖房・無設備の超ローテク住宅を2つの住んでいるところを見学した。
案内者:住民自治 NPO 担当者・建築家フランツ・ハンドリク氏 実際に5年前からこの賃貸に住んでいる。
市民エネルギー共同組合が100%再エネをやっている事例。
この組合は1985年のチェルノブイリの前に作られた組合。ここはかなり大きな組合。
850kwの太陽光が乗ってて、9割が自分たちが使っている。
バーゼルの街はちいさく、外に成長することができない。
この20年くらいで人口が13万人から17万人と4万人増えた。だから高密度化を進めている。
ハビタットという財団がコンペをし、まちから財団が買って、西地区と東地区に分けて計画。西地区は投資家に販売をし、かなり早く開発が進んだ。東地区は市の方が安く売るかわりにイノベーティブで模範的なものを作って欲しいということの計画。
その結果15の個別の街区に分けられ、12がすでに建築。すべてハビタット財団の所有する土地に立っていて、それぞれ個別に建設共同組合に渡して、それぞれが独自の賃貸集合住宅として建築されている。
中庭の管理は財団が行っている。建物の所有はそれぞれの建設共同組合。
この辺は野きろの杜で運営法人として動いているのでイメージしやすかった。
■地震がないので、構造の考えかたがそもそも違う。羨ましい。積雪1.0mや1.5mで耐震を取る。などがいらない。これは羨ましい。
■美しい大型木造建築が多かった。
施設建築から一般住宅もほぼ全ての建物の外壁が板張りか漆喰などの塗り壁で、そもそもサイディングはない。そして経年優化の考えがあり、外壁も80年から100年持つから木を利用するという考えだ。ここは僕と同じ考えだった。日本は経年変化に抵抗があるが、自然素材は変化して当たり前、プリント品を利用しないという部分がまず違う。外壁に利用するのはトウヒが多く、中にはナラを外壁に利用している建築もあった。内装はモミやブナ、そしてトネリコ利用もあった。全てはその地域にある森林資源を利用する。書いてみると当たり前だが日本と比べると意識の差が大きいなと。
■人口1200人、人口8000人などの小さい村でも必ず製材所、しかも1万m3クラスの製材所と工務店と木製サッシ屋さんがある。木製サッシ屋はアルミクラッド木製サッシを地域で作っている。要は、地材地建が一般的。
なんと樹脂サッシは賃料が安い集合住宅でしか使わない。
■ フォーアールベルク州(スイスもかも。)には耕作放棄地がない。これは農業関連の補助制度が利いていて、耕作放棄地にするより牧草地として管理しておけば、補助金がもらえる仕組み!!そして農地転用ができない。日本でいう既存集落での開発しかできず、その面積も決まっている。国土が小さいからなのか田舎でさえ土地は資産。という考え方。人口増加したから農地を宅地に造成するということをしない。で、この制度により土地を長期的に管理し続け、美しい景観も保持される。人口1200人のランゲネック村は農家が31あり全て酪農。
今回はバスで通り過ぎるだけだったけど、クルムバハ村からランゲネック村などこの美しい村には世界の有名建築家や地元の建築家がデザインしたバス停がところどころにありそれを見て回るだけでも楽しそうだった。地元の大地の芸術祭みたいでとてもいい取り組みだなと感じた。
■田舎でも都市部でも集合住宅の駐車場は基本地下。地上は歩いている人と自転車のみ。地下に入れたらお金かかるじゃん!ってことより景観重視。
■スイスでは一人当たりの平均居住面積が45m2。それがバーゼルでの木造賃貸集合住宅では一人当たり30m2で建築されていた。とは言ってもまだ日本よりも大きいのだが居住空間を小さくすることで、イニシャルコストとランニングコストとメンテナンスコスト、いわゆるライフサイクルコストを大幅に圧縮。
■断熱の義務基準が高い。オーストリアのヒッティサウ村やランゲネック村では、スーパーも保育園も小学校もパッシブ基準で建てられていた。
下の写真は全て人口1200人のオーストリアの小さな村、ランゲネック村に建っているパッシブ基準の建物。
■ 屋根の上の太陽光発電は積極的に取り入れていてなんなら壁も太陽光パネル。そしてなんと野建ての太陽光は法律で禁止!!これは真似したいけど。日本のように風景を破壊するメガソーラーがない。
■街並み、建築一つひとつが美しい。
■ ドイツでは念願のVitra Campus(ヴィトラキャンパス)へ
今から20年以上前の20歳から23歳くらいの時、新潟の家具屋さんのアパートメントさんに行って買えないけどずっと見ていた憧れの家具たち。それらが一度に見れて座れる場所。そしていろんな建築家の作品も見れる場所。
フライト時間が近かったのであまり時間をかけて見れなかったのが残念。ツアーに参加しないと篠原一男さんのから傘の家の中が見れないのでここは次回に。
■そういえばヨーロッパが凄すぎてドバイのことは書いてなかったので少し。
ドバイはギラギラ、煌びやか。不動産投資の国。
もともと貿易拠点として発展した国で、海運業や物流業などが盛ん。また、外国企業を優遇措置で誘致して、中東ビジネスの拠点として集積する政策をとっていて「フリーゾーン」と呼ばれる経済特区で、土地やオフィスビルなどを外国企業に貸して賃料で収益化。所得税などがないことも特徴。
ブルジュ・ハリファ含めドバイモールや周りのビルはほぼ全てと言っていいくらいEMAAR(エマール)のビルだった。エマールを調べてみるとEMAARとは、UAEの政府系不動産開発ディベロッパーで中東最大級。陸のエマールと呼ばれていて、それに対し海のナキールというのがパームジュメイラなどを開発している不動産ディベロッパー。
エマールもナキールもどちらも政府系不動産ディベロッパー。
どちらも数千億円から数兆円の超高層ビルや不動産を保有し収益化している。
政府系不動産ディベロッパー!政府つよー!国策で不動産投資回して、国を豊かにしようとしてるね。
世界一高いビル、世界一の人口島、世界一のキャンチレバーのビルなど世界一にこだわる感じが見えた。
UAEに住んでいる人の年収がなんと平均2600万円!という驚愕の数字。平均なので一部の人がめちゃくちゃ稼いでいるのでしょう。そして、所得税など無し。日本は所得にも、よるけど2割3割、4割の人もいるけど、UAEは公務員が多いらしくエマールもナキールも政府系だからそこに勤めている人たちの年収が高いのかな?と推測。
UAEの人、外国からのホワイトカラー企業の人、外国からの労働者の3つの層に分かれる、超格差社会がドバイ。
■トルコは歴史もある街で見ていてとても魅力的だったが、なんとトルコリラがこの1年で価値半分に。日本円と比較してもこの3年で価値が3分の1に。物価世界一のスイスからの移動でトルコイスタンブールだったので物価がめちゃくちゃ安く感じた。スタグフレーションがものすごいトルコは今、車も住宅も高くなりすぎて(下手すると10倍)トルコ人が買えず、みんなヨーロッパの人が購入していると、仲良くなったトルコ人から教えてもらった。ちなみにUAEのエマールのビルもいくつかあった。
ここまで書いてて、思うのがヨーロッパの国、地域、市民と意識レベルそもそも違いすぎる。。悔しい。またこのままいくと日本もトルコのようになってしまうのではないかと。
ここから僕に何ができるか?を考えるのが大事かなと思った。
今回、研修に行ってみて野きろの杜で行っていることは、自画自賛だがとてもいい取り組みだと感じた。そして地元苧島での古民家のエリアリノベーションも少しづつ着手していきたい。(まずは野きろの杜が先。)
野きろの杜は高性能賃貸と複合商業施設、人が集まる広場、これから建築するゲストハウスと景観維持と性能担保の建築協定をつくったことと街の維持管理と住む人と地域とのコミュニケーションづくりのための運営法人設立、歩いてすぐに保育園と小学校と駅があるスモールタウン計画。流石に車なしは難しいが、電車からの新幹線で都内にも行ける。(住んでいる弊社社員がそうしてるので。)
今から野きろの杜に地域熱供給をすることは難しいけど、建物性能も高いのであの場所では太陽光を利用した再エネ100%はできるのでは?とも思うのでチャレンジしていきたい。
これから野きろの杜は建築が一気に4棟スタートするので、少しづつ住宅が建っていくところも楽しんでいきたい。
切って使って植えて育てるために新潟県と協力し一気には難しいができるところから森林の再造林をしていって、持続可能な森づくりをし、デザインと環境とまちづくり、村づくりに力を入れていこう。
頑張る!
次はうちの社員連れてみんなでいこーっと。
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