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収穫の時

今日は新店舗の内覧会。

その前に去年(2018年)の4月に僕がオンラインサロン(閉鎖)に書いた記事を。

少しお付き合いください。


以下、抜粋
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【魔法の手?】

開局して半年くらい経った一昨年の11月頃に、
クリニックのドクターから患者さんを紹介されました。

「今から処方箋のFAX送るから、ちょっと面倒見てやってくれますか?」

処方内容は
アトルバスタチン
バイアスピリン
ベラパミル

えらい軽い処方きたなぁと思って訪問しました。

減薬の時代ですが、
やっぱりそれなりに薬が出ると血が騒ぐ感じがしませんか?

ちょっと寂しい気持ちになりました。
ただの配達かー、と思いました。

これくらいなら一包化しなくても大丈夫かなぁと思って
ヒートで持って行きました。

患者さんの自宅で話を聞くと、肺がんでした。

オプジーボの副作用で重症筋無力症になって、
要介護4で何とか退院してきて、
プログラフやらステロイド隔日やら何やらで、
リクシアナまで出てるし…

「こんな重症患者、予習なしで対応できねぇよ!」
と内心、思いました。
先生、電話くれた時に詳しく教えて…

退院時処方でヒートで出てたプログラフ(6個ずつ)とステロイド(9錠隔日投与)とその他諸々の薬剤と
紹介のあったクリニックの軽い処方を分包しに薬局に戻って、
即日カレンダーにセットして届けたのを覚えています。

それからはアドヒアランスが向上して、
薬のストレスから解放されたと本人にもご家族にも喜んでもらえて、
ステロイドも少しずつ減らしてもらえるように報告書にネチネチ書いて、
少しずつですが、家の中を歩くくらいはできるようになってきていました。

約半年経った去年の5月頃に肺がんが悪さをしてるかもしれないから、
もう一回入院して治療してもらうとのこと。

「だいたい2週間から3週間で退院できると思うわ」

無事に退院してきてくれて、
CEAの値がかなり上がってた(300くらい)けど
TS-1の服用でだいぶ下がってました。(70くらい)

患者さんには言わなかったけど、
このタイミングでのTS-1はドクターからすれば苦肉の策だったと思います。

それからは一進一退で入退院を繰り返して、
痛みが強くなってきたようで1月にも入院して、
疼痛管理が始まりました。

退院してきた時には
セレコックス100 分2
カロナール300 分4
トラマール50 分4

いよいよだな、と。

退院時処方をきれいに整理して、
水曜日からきっちり飲んでもらったけど、
痛みが取れない。

完全に寝たきり状態。

木曜日の段階で連絡があって、来週月曜日に入院が決まりました。

金曜日に訪問して入院の準備をしました。

その時、患者さんが腹部の痛みを訴えました。
セレコックス、カロナール、トラマール…

次に使える手はもうオピオイドくらいしか浮かびませんでした。

近所のクリニックのドクターは恐らくオピオイドは処方しない。
市立病院は月曜日まで対応してくれない。

僕にできることと言えば…


患部をさすってあげることでした。

15分くらいかな。
お腹のあたりを無言でさすって、
「少しはマシになったでしょう?」
とハッタリをかましてみました。

すると、
「ちょっと落ち着いた」
とのこと。


おー…俺の手にはそんな力があるのか。
ゴッドハンド。

奥様には
「さすが薬剤師さんやね」
って言われたけど、
残念ながらこの能力は薬剤師の能力じゃないです。
少なくとも、教科書には載ってませんでした。

「この薬剤師さんなら、きっと何とかしてくれる」
という信頼関係があったから、
痛みが取れた「気がした」だけだと思います。


僕は患者さんのお腹をさすりながら、
2つの選択肢を考えていました。

①月曜日の入院まで耐えてもらう
②すぐにオピオイドを処方してくれるドクターに連絡する

月曜日に入院が決まってなかったら、②を選択していたと思います。

でも入院が決まってたので、①を選んでしまいました。


その患者さんがこの週末を痛みを伴いながら過ごすことを考えると、その選択を後悔してます。


病院とのやり取りがややこしくなっても、
すぐにオピオイドを出してくれるドクターにコンタクトを取って、
今の痛みから解放してやる方がよかったのかな。

わからない。

つくづく、己の知識不足、経験不足を痛感します。


あの二択でどちらを選ぶかで
従来型の薬剤師と未来型の薬剤師か分類できると思います。


今回の僕は従来型の薬剤師でした。
仕組みに気を取られて、患者さんを最優先できませんでした。


明日の朝、患者さんに電話してみようと思います。

せめて少しでも僕の「魔法の手」の効果が残ってるといいな。

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以上、抜粋。

入院から約3週間後、この方は亡くなった。

そして今日、僕が移転するのを内覧会の案内で見て、
奥様が涙を浮かべながら開局のお祝いを持ってきてくれた。

それがこの手作りの人形。

「リンクさんにはお世話になったので、何かお返しをしたくて…」


薬が繋いでくれた、ご縁だった。


開局してから3年、僕は自分で選んだ道に懐疑的だった。


大きな薬局のように患者さんがたくさんいるわけでもない。
贅沢ができるほど儲かってるわけでもない。

自分の選択肢を正当化する理由がなかった。


今日、やっと自分の選択に自信を持てるようになった。


どの道を選ぶかには何の意味もない。


選んだ道に意味を持たせられるか。


選択肢に価値を持たせられるか。


それは運でも何でもない。


自分の行動の成果だ。


少し前にある方が
「寿司の修行に3年もいらない。3ヶ月で十分」
と言って炎上していた。


一理ある。
一理あるが、やはりすぐには結果は出ない。


炎上した方も
「楽して結果を出せ」
と言っているわけではない。


恐らく真意としては
「正しく努力すれば、一流の寿司職人が握る寿司の味なら3ヶ月の修行で再現できる」
そういう意味だと思う。


再現性のある料理の質、サービスの質は機械化されるだろう。

その道は、Amazonと楽天、大手調剤薬局に譲ることにする。


僕はリアル店舗で生きていこうと思う。


人の体温で機能するリアル店舗は機械化できないので非効率的。
種を蒔いてから収穫まで、1年、2年、3年とかかることもある。


ただ、種を蒔かないと収穫はできない。


非効率的だから付け入る隙がある。


弱者にもチャンスがある。


種を蒔こう。


水をやろう。


収穫を急ぐな。


それが弱者が生き残るための最短距離だ。


今日、僕(あなた)は種を蒔けただろうか?



その成果は未来にある。




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