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過去のことより未来のことを話す

「職場のリーダーは未来のことを話す」

これは私が事業運営する際に、常に心掛けていることでもあります。

過去はすでに起きてしまったこと、未来はこれから起こること。

過去の出来事は変えることができません。

今日は「今ここからできること」の大切さについて、上司と部下の対話形式でまとめてみました。

過去について話す

リーダー「社員が突然2名辞めると言っています。これでは現場はまわりません。」

社長「なぜそんなことになったんだ?」

リーダー「方針の違いでぶつかり合って、納得できないからと二人とも退職届を出してきました。」

社長「何でもう少し早く手を打てなかったんだ。突然というのは現場を見てなかった証拠だ。ぶつかり合ったのはいつだ?」

何か問題が発覚したときに、どうしてそうなってしまったのか、原因は何なのか、上の会話のように起きた出来事に対して過去の事実確認を明確化し、原因を追及しようとする人は多いですし、その気持ちも良くわかります。

しかし、原因を追及して状況が改善することもあれば、改善されないこともあります。

それはトラブルの元となる原因は1つでなく、2つ3つが複雑に絡み合っていることもあるからです。

仕事内容が自分に合わないと感じていたかもしれないし、職場までの通勤時間が長いと感じていることもあるのかもしれない。親の介護で精神的に疲れてきていることかもしれないし、それでパートナーに仕事を辞めるように言われたのかもしれません。

本当の原因は1つじゃないし、本人が本当の原因を話さないときもあれば、本人もよくわかってないこともあります。

あり得る原因の仮説を立てて、それらをすべて改善しようとするのは、チームのレベルアップにつながりますが、原因を追及することで状況が悪化することがあります。

それは、過去の間違った対応を洗い出すプロセスの中で、追及される側が「自分が悪いのか、私のせいだと言うのか」と自分に責任を感じて自分を責めてしまうことがあるからです。

「なぜ?どうして?」の問いは、時として人の気持ちを追い込んでしまいます。

社長の「何でもう少し早くできなかったんだ。」の言葉の裏に「おまえが早く対処していればこうはならなかった。」という言葉を感じ取ってしまい、社長が「そんなことを言ったつもりはない。そんな風に捉えるなんて子供じみてるしとても遺憾だ」と思っても、多くのリーダーは「自分のせいだ、悪いのは自分だと言われているんだ」と思ってしまうのです。

人によってはこのように言われて、「教訓を得た。次はないようにしよう!」と前向きに捉えられる人もいるかもしれませんが、皆がみなそうではありません。

背負わされる責任と頑張って来たことを否定されたことに対して、やる気をなくしたりそこから逃げたくなる人もいます。今起こっている状況を何とかするのが先決だと、目の前の処理に目を回していて耳に入らない状態でもあるでしょう。

特にリーダーを自分で志願せずに、上司に言われたので引き受けた程度の意欲である場合、原因追及することが悪く働くことが多いです。

場合によっては、信頼関係が崩れてしまうことがあるかもしれません。

ですから、過去の原因がある程度わかったらそれに固執せず、今この時点からできるベストな行動を取ることに集中するのです。

未来について話す

私の場合、どんな相手なら原因究明が効果があり、どんな状態なら(人の心の状態は変わるので)効果があるのかを推し量ってもわからないし、それを見抜くのは困難だと思うので、過去に起きてしまったことをとやかく言うことはしないよう努めています。起こってしまった出来事にフォーカスすると、執着となってその出来事に捉われるようになってしまうからです。

過去という字は過ちが去るとも読めます。過ぎたことをいつまでも言っても仕方ないです。

それよりも、「今ここ」から、何をすることが一番の得策か、すぐに改善できることはないか、まだ間に合うこと、今からできることはないかについて一緒に考える方が賢明です。

西洋の諺に「人がこれからやる行動は、その人がどこから来たのかではなく、どこへ向かおうとしているのかを聞けばわかる。」というものがあります。

過去の経歴や実績以上に、これからの意欲や目的、志が大事だということです。

アドラーも原因論を否定し目的論を肯定していますが、この考え方が人間関係を良くする上で大切だというのです。

先ほどの会話を未来志向の会話にするとこんなふうになります。

リーダー「社員が突然2名辞めると言っています。これでは現場はまわりません。」

社長「それは大変だ。今日にでも2名それぞれと話し合う時間は取れそうか?」

リーダー「夕方になれば1人ずつ業務から離れることはできます。私の方で話してよろしいですか?」

社長「2人に近いのは君だ。まだ話せていなかったとしたら話を聞いてみてくれ。」

(面談後)

リーダー「二人はどうやら仕事に対して価値観の違いがあるようです。Aさんはもっとスピーディーに進めれば成果を増やせると考え、Bさんはミスがあれば再点検する必要があるので、正確に進めることを重視しています。」

社長「それならBさんの配置替えをしよう。正確さが要の事務職が向いているかもしれない。」

リーダー「それとBさんは家の事情で扶養内で働く環境に変えたいようです。パート勤務になれるなら続けられそうということですが、来月になれば育休明けの職員が戻るのでシフトも組めます。」

社長「それならそのタイミングでパート雇用を選択できることをすぐに伝えてくれ。彼女の仕事の処理能力はとても貴重だ。」

リーダー「わかりました。これなら何とか二人とも辞めずに済みそうです。」

こんな風に上手くいく場合ばかりとは限りませんが、大事なのは問題が解決するかどうかということではないのです。

問題解決以上に大切な信頼関係の構築

どんな問題でも、うまく解決できるときもあれば、できないときもあります。

それは過去の原因を追及したからといって、100%解決できるわけではありません。

問題が起きた時に最も大切なのは、「問題を解決する」ということ以上に「信頼関係を強固にする」ということです。

もちろん問題を解決することは重要です。しかしそれは一時的な問題で、部下との信頼関係は、永続的な問題でより重要視すべき問題です。

問題解決はできるかできないかはわからない、しかも一時的なこと。

部下を批難し責めてしまうことで、信頼関係は崩れてしまうかもしれません。そして一度崩れてしまうとなかなか戻ることはありません。

リーダーが一目置いている部下であるなら、それはとても残念な結果です。

部下は指摘されなくても「もっと〇〇しておけば良かった」という想いが生じて、言われなくても自分でわかるものです。

上の事例を比べたとき、最も異なるのはリーダーの心です。

未来志向で話した方が、前を向いて責任を持ってやるべきことにしっかりと取り組みます。過去に焦点が向いて捉われてしまうことで、気持ちはスッキリせず、モヤモヤしたネガティブな感情を引きずったまま物事に対処することになります。そんな調子では良い結果を結ぶ可能性も低くなります。

これは部下を甘やかすのとは違います。前を向いて進むのか、後ろを向いてその感情を確認させてから進むのか。

「問題解決以上に信頼関係の構築」

これは価値の序列の優位に、問題解決以上に部下との信頼関係を置いています。

原因追求は自らの行いを自分で反省する場合には効果があります。しかし、他人の間違った行いを他人が追求するのは諸刃の剣です。

会社経営は人に始まり人に終わります。

人を重視する会社であれば、信頼関係の構築は何よりも大事な最重要課題なのではないでしょうか。

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