Game DemandsとWorst Case Scenario ①
◆はじめに
少し趣向を変えて、ワークロードをモニタリングする前に必ずやるべき工程について記事にします。
そんなこと当然やってるでしょ?
いいからまずデータ処理しようぜ!
と考えがちですが、そもそもの手段であるモニタリングを効率の良い作業にするためにも、時間と体力の投資配分を適切にする必要があります。
◆なぜモニタリングするのか?
以前の記事では少し堅苦しい表現をしましたが、非常に重要なのは
選手の安全性を担保しながら試合に勝つための準備をする
ということです。
試合に勝つための準備として、強度の高い練習を精度高く実施しなければいけません。
強度の高いコンタクト、鋭い加速、速い走速度、短い休憩、これらを高頻度で多く(または長く)遂行出来る耐性を練習で養うことで、初めて思い通りの戦略や戦術をやり切ることができます。
まずは試合によって身体にかかる負荷を明らかにし、そこで上記の耐性を発揮するために適切な負荷を練習でかけていきます。
作業の順番としては
・試合全体で身体にかかる負荷(Game Demands)を明らかにする
・試合で最もキツい状況において身体にかかる負荷(Worst Case Scenario :WCS)を明らかにする
・負荷に対して適応を促す
となります。
◆Game DemandsとWCS
Game DemandsについてWorld Rugbyは下記のように述べています。
比較的レベルが近いチーム同士の対戦を、ポジション別に分析することで練習を組み立てるための基準を定めます。
GPSのデータのみならず、Ball in Play Timeを分析して
・1プレーあたりの平均継続時間と回数
・最も長かった1プレーの継続時間
を明らかにしたり、スキルに関係するスタッツ(タックル回数など)をまとめることで、要求される体力要素を推察することが出来ます。
また、試合全体の様相は練習の大枠を決める際の判断材料となりますが、試合において高強度な運動を繰り返し要求される "いわゆるキツい時間帯" への耐性はWCSの分析が必要です。
という表現で、そのプレーの内容を問わず長く続いたプレーをWCSに定める考え方があります。
しかし、その考え方だとゴール前のピック&ゴーを繰り返すことで特定のポジションだけ外れ値の要素を求められたり、チームの練習をデザインする上ではしっくりこないと個人的には感じます。
この試合の後半30分すぎ(1:02:53-) は約8分で63フェイズも続いたシーンですが、攻守交代がなくFWのボールキャリーが殆どを占めています。
アイデアとして、まずラグビーコーチや選手に
・2分以上継続したプレー
・自チームのATとDFそれぞれのプレーを選出
・特定のポジションに負荷が偏らないプレー
などの条件を伝える方法があります。
そうして定められたWCSのGPSデータやスタッツを分析して、''キツい時間帯"を意図的かつ再現性のある方法で練習中に作り出すことで、耐性が養われていきます。
◆おわりに
ワークロードをモニタリングする上で、特にGPSデバイスを使う際に立ち返る場所となる考え方について書きました。
既に実践している方にとっては振り返りに、新しくアイデアを得た方には何かのヒントになれば幸いです。
【引用】
The worst case scenario: Locomotor and collision demands of the longest periods of gameplay in professional rugby union
Reardon et al. 2017
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