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講演会で気づかされること

 講演会という機会をいただいた。高校生に向けての講演会。集英社と各県の新聞社とが合同になって地元の高校生を対象に主に作家と呼ばれる人たちに講演会をしてもらうということをもう何十年も続けているそうだ。読書の普及を促進するのが目的ということだから、何かしら本というものに関わっているのが条件。僕はたまたま写真集も出しているし、出版に多少携わってもいるし、小さな本屋もやっているから選ばれたと思っている。

 この日は大分の二つの高校を午前と午後にそれぞれ一時間ずつ講演会をやらせてもらった。どんなことを話そうかということを延々と考えても(オファーは数ヶ月前から受けていたので、考える時間はたくさんあったはずだが)結局まとまらず頭の中から逃げていってしまう。プロジェクターを準備していただいているので、これまでの仕事や作品集を見せて説明することは最低できるからそれらの画像の手配はしてある。ただ自己紹介だけで終わってしまうのもなんだか寂しいから、今の写真をめぐる状況を伝えられたらなどと考えていた。しかし全員が写真業界や写真そのものに興味があるわけではないのも知っている。相手は写真の学校の生徒たちではなく、高校生たちだから、写真家の話を聞きたい人は一握りなんだと思う。それでもたった一人でも何か興味を持って聞いてくれる人がいたら、欲を言えば、この講演会がきっかけでものすごく将来について考え始めたとかいう人が一人でもいればやった甲斐があるというものだ。

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写真家の若木信吾です。 写真に関するあれこれです。写真家たちのインタビューや、ちょっとした技術的なこと、僕の周辺で起こっていること、それら…

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