見出し画像

再び京都

 京都にひとりで行く機会というのが数年に一回あるかないかという感じなのに、去年のブライアンイーノ展から半年のうちにまた来れたのも何かの縁かもしれない。京都駅にひとりで降りる度に毎回初めて来た場所のように感じる。都市の駅は常に変わっていくからなのか、多すぎる店や人々をなるべく見ないように目的に向かってしまう。今回の目的は「ディクショナリー」の1月号で特集されたウサギ年カレンダーで参加させてもらったので、そのグループ展の作品展示に立ち会うためにきた。「ディクショナリー」を編集出版している桑原茂一さんがギャラリーで待っていてくれた。遠くからでもその黒いハットとサングラスで茂一さんとすぐわかるから、少し離れたところからでもギャラリーの場所を見つけることができた。
 
 茂一さんは最近よく通っている光明院に僕を連れて行きたいと言ってくれた。まだ午後の光の綺麗なうちに京阪電車に乗り向かうことができた。光明院の前知識は全くないので、こういう時ほど楽しみなことはない。その日の午前中に宿泊先近くの三十三間堂を訪ねたが、その荘厳さに度肝を抜かれる一方、博物館に来ているようなクールさというものから離れることはできなかった。もちろん場所自体もクールというか本当に寒くて、厚手の靴下を履いていても足元から冷え込んでくるほどで、何か追い立てられるような気持ちになりながら廊下を進んだ。

 それに比べて光明院では茂一さんがご住職の方のこともよくご存知のようだったので、また違った気分で尋ねることができた。門をくぐってすぐに
ご住職の慶水さんにご挨拶し、茂一さんの持ってきたお団子とお茶をいただき、場所にも人にもウエルカムされて見学するのは全然趣が違う。慶水さんがご住職になられてから、光明院ではアーティストの展示をよくやられていて、その日もフランス額装の作家の展示が行われていた。さまざまな額装が直接畳の上に置かれていたのはとても新鮮だった。来月2月からは僕らの界隈ではお馴染み、大人気の書家、新城大地郎くんの展示があるということだ。お寺だらけの京都で、ここまで繋がりのある場所に一発でいけるのは茂一さんのおかげだ。

ここから先は

1,146字 / 1画像

写真家の若木信吾です。 写真に関するあれこれです。写真家たちのインタビューや、ちょっとした技術的なこと、僕の周辺で起こっていること、それら…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?