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「Things and seen」 Episode#2 新写真集の馬の写真について

  写真の持つ、記憶を引き出す鍵の力について前回書きました。そして表紙のシダ類の葉の写真について、僕の記憶を辿ってみました。今回は最初のページにある馬の話です。

 馬と言ってもこれは木で作られたものです。神馬といって、神社に奉納されているものです。神馬で僕が好きなのはこの他にもあって、笠間神社の神馬です。これはものすごくカッコいい。静と動が非常に対照的です。

 この写真の場所は渥美半島の伊良湖岬近くの伊良湖神社の神馬です。この馬に出会った時はその神がかった存在感に本当にしびれました。サイズもかなり大きく、日本の馬のサイズだとしたら実際と同じくらいかもしれません。その馬のために建てられた社はとても静かで落ち着いた雰囲気です。かといって寂しいというわけではなく、静かに光り輝いているという感じです。

 伊良湖神社は伊勢神宮直系の由緒正しい神社ですが、そのコンパクトさと、人気のなさといったらありません。一見地元の氏神様でも祀っているのかと思うくらいです。ところが階段をやっとこさ登ってきて鳥居をくぐると、圧倒的な神々しさに疲れも吹き飛びます。玉石の敷き方や手入れのされ方ひとつとっても、これは神様いるわ、と素直に感じてしまうほどです。

 なぜここに辿り着いたかという話をしたいと思います。僕の最初の映画「星影のワルツ」の撮影が終わった次の年、映画に出演してくれた、英ちゃんと弘ちゃん、そして彼らの友達の知恵さんや仲間たちで渥美半島に夏休みに出かけたのです。そのみんなは映画の撮影現場や、スタッフたちとの和やかな雰囲気がとても気に入っていたらしく、映画の撮影直後からずっと「今度いつ撮るの」とか、「このメンバーでバーベキューしにいこうよ」とか、いいつづけていたのでした。

 夏になって渥美半島の民宿が取れたのでみんなで泊まりがてら海水浴に行くことにしました。僕と当時アシスタントをしてくれた福ちゃんを含めて7人だったかと思います。その様子は写真集「英ちゃん弘ちゃん」で見ることができます。

https://youngtreepress.stores.jp/items/5551a04886b188ca890004a7

 大型のバンを一台借りて福ちゃんが運転して、みんなで移動中その神社への入り口を見つけていってみようということになったのでした。本殿へ向かう夏の山道はゆったりとしていて気持ち良くて、セミの鳴き声も夏休み感をさらに盛り上げました。しかし本殿近くの鳥居をくぐると一気に雰囲気が厳かなものに変わったのです。伊勢神宮の巨大な厳かさとはまた違った、でもどこかあの透き通った空気は同じで、誰もいないのに、何かの存在を感じました。僕は一人で大興奮ですごいすごいといってその目に見えない存在感を写そうと一人盛り上がって色々写真を撮っていました。ほんの短い間だったと思いますが、他のみんなはどうしてたのだろうと思います。そのくらい入り込んでしまっていたのだと思います。

写真集「Things and seen」は10月末に発売です。

下記から予約受け付けております。


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