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サラリーマン若手編-事業部 その2 無駄な事は無い!

雑用だらけの日々

 事業部に来た途端に、戦略会議資料の作成や手直しに明け暮れ、とてもじゃないが顧客に営業しに行くような状況ではなかった。戦略会議資料といっても、右も左もわからない中で、自ら戦略提案なんて出来る訳がない
 上司や先輩が議論し、分担して資料作成をしているのを、横で見聞きしながら、指示された自分のパーツを作り上げ、上司にチェックしてもらう。時にはデータを纏めたりしながら、また資料を作る。初めの2カ月は、ひたすらそんな状態だった。

 事業部に来る前のイメージは、ひたすら顧客訪問を繰り返し、マーケティング戦略に基づき、提案型の営業をしていく事。スーツケースを引きずりながら飛行機乗り回して、英語で商談。そんなイメージだったが、初めの2か月間の仕事は、それからほど遠くかけ離れていた。。。

苦しんだ中で自分で生み出した仕事の5つの法則

 早く外に行ってみたい。でも上司や先輩も含め、皆異常に忙しい。だから、手取り足取り教えてもらうのは難しい。何も教えてもらえず、担当顧客もない状況で、勝手にどこかに行くわけにはいかない。面倒見の悪い環境下で自分なりに編み出した自分なりの仕事の法則。それは以下の5つだった。

 ①誰よりも早く作業を終わらせて余白を作る事
 ②余白で一つでも二つも、自分なりの考察を入れる事
 ③先輩や上司がやっている作業を、自ら進んで手伝う事
 ④まずは優れたイミテーション。そこからの改善の連続。
 ⑤わからない事があれば聞く!そして調べる!

法則①誰よりも早く作業を終わらせて余白を作る事

 新入社員にとって、その職場で振ってきた作業量は半端じゃなく多かった。戦略検討が右に行き左に行きを繰り返すと、更に作業が増えてくる。一つ一つを丁寧にこなすことも大事かもしれないが、仕事に100点満点はない。
 時間がかかって出てきた80点のアウトプットより、素早く出てきた60点のアウトプットの方が、依頼人からすると価値がある。
 とにかく、人の倍速でアウトプットを出すようにし、その代わり60点の出来を目指すというのが私のアプローチだった。お陰で、依頼人との期待調整が頻繁にできたので、大きく外れる事は無かった。

法則②余白で自分なりの考察を入れる事

 素早く作業を終えた後に、必ず自分なりの分析と考察を入れる事にした。
資料を作り終えたらそこに一つか二つコメントを加えたり、自分なりの分析や気づきを入れるようにしていた。
 時には、単なるデータ整理の仕事でも、データを分析する事で見えてくる新しい考察や戦略的議論が出てくる。新入社員は全てのデータを扱う事が多くなるので、そのデータを頭に叩き込み、自分なりのフレームワークで解析してバリューを出していく事を意識した。

法則③先輩や上司の作業を、自ら進んで手伝う事

 業務に忙殺されていた時期ではあったが、それでも自分の仕事をスピーディーに終わらせて余白を作る事で、自分なりの時間を持つことが出来た。その余白時間を、あえて先輩や上司の支援に使い、自分を追い込んだ。
 忙しい部署だったので、先輩や上司も忙しい。猫の手も借りたいくらいだった。そこで、”媚を売る”訳ではないが、”信用貯蓄残高”をためる”為に手伝いを申し入れた。
 「何かお手伝いできる作業などあれば遠慮なく言ってくださいね」と声をかけると、上司や先輩の殆どは「おっ、助かるわ。じゃぁ、これやってもらって良いかな?」と依頼してくる。
 自分の担当の仕事を超えて、先輩や上司の仕事を手伝う事は、自分の視野を広げ、全体感を理解する為に非常に役に立つ。それがデータインプットであってもだ。
 例えば、顧客データの入力と整理、分析という仕事があった時、自分の顧客データの入力だけではなく、先輩が持っている地域の顧客データもまとめて入力する事を申し出た。先輩にとってはありがたい申し入れだった模様で「助かる。お願い」とデータ入力依頼が来るようになった。これを複数の先輩に申し入れる事で
 ①全ての製品、全ての顧客データを手元に持つことが出来、そこから全体分析が出来るようになった。
 ②各々異なるやり方をしていた先輩達の作業を統合する事で、より効率的なデータ入力から分析までのプロセスを構築する事が出来、トータルの作業時間を減らすことが出来た。

 顧客データ入力、分析作業を一手に引き受け、作業効率を上げた後は、工場側のコストデータの入力分析作業の支援を申し入れた。これまた先輩は「おっ、助かる。宜しく」という事で、データを渡してくれるようになった。
 工場減価や配布コスト、本社販売間接費、販売直接費などの情報を全て手元に置き、事業全体を数字から分析し始めると、様々な課題が見え始めたので、先輩や上司に色々な仮説を投げかけ始める事が出来た。
 たかが入力作業と侮るなかれ事業の全てのTransactionは数字で表れてくる。そこを押さえると、Factの大部分を押さえる事が出来る。「お手伝い」によって、事業をデータから分析し提案する事が出来るようになった。 

法則④まずは優れたイミテーション。そこから改善の連続

 法則③でデータ入力と分析の話をしたが、急に「分析をやれ」と言われても、自分に優れたアイディアなんてない。オリジナルな分析方法を新入社員が開発することなんて、普通はあり得ない。
 そこで、実行したことは、「ひたすらインプットをする」という事。つまり、世の中に出ている既知の情報を学ぶことだった。
 数字を扱う以上、数字の意味や繋がりを理解する必要があるので、「商業/工業簿記」「管理会計」「データによる意思決定メカニズム」の学習を実務と平行して行った。理論を頭に入れ、フレームワークが出来ると、実際の数字を当て込んだ時に見える世界が変わってくる。
 戦略策定やマーケティング理論についても、すぐに学び始めた。そうすると、顧客データやマーケットデータを 5Force分析、3C分析、4P分析、ABC分析等で整理し始める事が出来る。これも理論と現実の世界を行ったり来たりしながら仮説を作ることが出来る。
 フレームワークがあると、物事の整理が早くなる現実のデータやリアリティがあると、理論を実践に落とし込む際の深掘りが出来るようになる。顧客情報をデータから分析した上で、他の人が共有してくれた顧客訪問報告書を見せてもらうと、数字の裏側の交渉ファクトや競合の状況が垣間見えてくる。
 自分が実際にマーケットに出ていなくても、想像し仮説を持つことが出来るのが、既にあるフレームワークをたたき込み、イミテーションしてみる事だった。
 「優れたイミテーションの連続は、中途半端なイノベーションを凌駕する」というのは言い得て妙成りと感じた。

法則⑤わからない事があれば聞く!そして調べる!

 仕事を進めていると、「知らない事、わからない事」が結構ある。それはそうだ。ゼロから始めているのだから。
 その時に「私は教えてもらっていないからできません。」というのはナンセンス。それではあまりに主体性が無い。実際の職場では、先輩や上司はかなり忙しく、面倒をいつも丁寧に見てもらえない事が多い。
 その時に、「教えてもらえないから仕事を止める」のか「教えてもらえないのであれば、自分で誰かに聞くか調べる」のかは、大きな違いが出てくる。

 戦略会議の資料作りをしていた時、全体感や資料作成のフレームを教えてくれる人はいなかった。そこで行ったのが書庫に行く事だった。
 書庫には、過去の投融資の資料や戦略会議資料が沢山埋まっていた。先ず最初にやったのは、暇な時間に資料をひたすら読み込み、先人がどの様な資料をどの様なフレームワークとロジックで作っていたかである。少なくとも、経営陣の承認を得た会議資料をいくつも読み込めば、自ずと道筋は開けてくる。

 「教えてくれない事」を嘆くのではなく、「どこに行けば情報にアクセスできるか」を考えて動くというのも、大事なことだと思う。書庫の書類やサーバーのファイルにも、学ぶべきことは沢山あるのだから。



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