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2021.10.6.wed. 図書館という迷宮へ。

図書館の面白さは、探していた”そのもの” だけではなく、そのつながりや、あるいはぜんぜん関係ないものが、縁があったね、という感じでふっと目に入ってくるところにある。

いつだったか明け方のラジオで、渡辺一技(いちえ)という人のインタビューをきいた。なんだかとても素敵な方で、チベットや福島の話などされていて、本も出しているとのことだった。調べてみたら、まあずいぶんたくさん書かれている作家であられました。

ところがAmazonでは私が読みたかった彼女の本がみつからず、久しぶりに図書館に行って探すことにした。検索コーナーにはあったものの、貸出中。ラジオの影響かな。で、その関連の本棚を見ていたら、この本が目に入ったというわけだ。

『チベットの昔話』アルバート・L・シェルトン著/西村正身訳/青土社/2021

医師で宣教師だったアメリカ人がチベットに1903年から1922年の延べ12年間滞在した中で、現地の人たちからきいて集めた話が49本納められている。かなりの数だが、一話が短く『グリム童話』に近い感じだろうか。

チベットの昔話なんてあまり興味もなかったのだが、読んでみると面白い。山岳地帯の自然で育った人たちの語り口調のせいなのか、シェルトンの書き方なのか、翻訳がそう思わせるのかわからないが、どの話も、おとぎ話というより、大人がきく昔語りといった知的な印象を受ける。

シェルトンは22年、ラバで移動中に山賊に銃撃され亡くなっている。だから本人はこの本の出来上がりを見ていない。シェルトン夫人によって25年に初版が出版された。ここでは夫人が前書きを書いていて、解説によれば夫人自身も娘もチベット関係の本を書いている。どうやらチベット一家らしい。

ところで、それぞれの話の前には、それに関連したようなしないようなチベットの諺が載っているのだが、これが諺なのか? と思うものが多い。しかし読み返すと何かが隠されているような気がしてくるから不思議。たとえば、「月すら見えないときに泥棒はヤクの子を盗む」なんて、そのココロは? とききたくなる。これがチベットという国の魔法なのかな。



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