敗北宣言
今週も先週に続いて、
Twitter上での「殺伐感情戦線@殺伐百合投稿企画」に掌編(物語)を投稿するつもりでいました。
出されたお題は「承認」でした。
一応、考えました。
沢山、考えました。
ですが、
投稿2回目の挑戦にして、降参です。
ごめんなさい、降参です。
敗北宣言です。
「殺伐」「百合」そして「承認(欲求)」。
この3題で掌編を紡ごうとして、考え出した瞬間に、私の記憶から野田秀樹作の戯曲「半神」(原作 萩尾望都)が湧き上がって、脳内を席巻してしまいました。
こうなると、もう駄目です。
どんな設定を考えても、すぐに地滑りを起こして「半神」もどきになってしまいました。
だからって、「半神」に比類できるものを作るなんて無理です。
「半神」は名作中の名作です。
あんなバケモノ戯曲と、どうやって争えと言うのですか。
野田秀樹版(半神)の醍醐味は、ヒロインのシュラの葛藤。
これにつきる戯曲(舞台)です。
あらすじは、
岬に建つ塔に住む、シャム双生児の姉妹。
賢くも醜いシュラと、白痴と美しさを備えたマリア。
周囲の大人たちはマリアの美しさのみを愛でて、その世話はシュラに押し付けています。
シュラは、マリアの光に隠れて大人からは無いものとして扱われているのです。
シュラにとってマリアは要らないどころか、邪魔な存在。
だが、シュラを一番に認知してくれているのはマリアであり……。
やがて、心臓が二人分の生命活動を支えられなくなる時がせまり、分離手術が行われることになります。
生き残りに選ばれたのはシュラでした……。
物語では、このエピソードを軸に、世界の果てに住む魔物たちや、4次元から5次元へと連なる螺旋の式を探し求める数学者が絡んできたりするのですが、やはり中心はシュラとマリアです。そして、世界(もしくは一人)からの承認がストーリーの核になります。
シュラはマリアを憎みながらも、マリアという存在に依存していました。愛してもいました。
マリアはシュラのみに依存し、シュラのみを愛していました。
クライマックスに至り。
分離手術は成功し、ふたりは生と死に分けられます。
魔物たちは、生き残った方に「孤独」を、死して魔物になる方に「音」を与えるのでした。
劇中で唱えられる、レイ・ブラッドベリ作の小説「霧笛」からの引用が更に切なさを募らせてくれました。
そういう物語なのです。
初見から30年も経つのですが、今、思い出しても、鳥肌が立ち、涙が滲みます。
私にとっては、そういう作品です。
そんな作品が、脳内で私の前に立ちはだかってしまったら、なす術をなくしてしまうじゃないですか。
仕方がないじゃないですか。
もうねぇ、敗北宣言しかできないんですよ。
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