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本質に還ることの意味と意義

ベンチャー起業家でもあり、投資家。そして、スタートアップと投資家とを繋ぐSNS、”AngelList”のファウンダーでもあるナヴァル・ラヴィカント。本書がその表題をもって「シリコンバレー最重要思想家」と言い切る人間が、これまでに語り、紡いできた言葉が体系化された1冊となっている。とはいえ、ナヴァル・ラヴィカントの名前は一般的にはさほど知られていない気がするので、書店に平積みされた本書の装丁を目に留めて、若干首を傾げる人も少なくないだろう。逆に言えば、そのギャップ故に興味を掻き立てられる人間も相当数いるはずで、私自身もご多分に洩れずそのクチだ。

本書は2部構成となっており、第1部が「富」、第2部が「幸福」をテーマとしている。第1部のサブタイトルには「この世界で運に頼らず『リッチ』になるには」とのメッセージが添えられており、一見すると資本主義社会を勝ち切る戦略論のようにも映るのだが、その内容は決してチープなものではなく、個人的には本書の醍醐味はこの第1部、それも冒頭8ページほどに掲載されているナヴァルの連投ツイートに集約されているように思う。その結論は極めてシンプルで、突き詰めればこの1行が全てだ。

自分をプロダクト化せよ。
『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』(p.47)

ナヴァルは仏教思想からも多くの影響を受けており、特に第2部「幸福」においてはこの要素が非常に色濃く出ている。こちらも非常に興味深い視点や指摘が多いが、この辺りの捉え方は個人差も少なくないだろう。幸福の定義を誰かに依存する必要はなく、それぞれの読者が自身の感性に照らして取捨選択をすればよいのだと思う。ただ、外部に左右されない自由を通じて、自分という存在の唯一性を掌中に取り戻していくプロセスを重視するスタンスについて言えば、個人的には全く同感だ。

結局のところ、富であれ幸福であり、テクニックで本質は得られない。それ故に、良く生きたいのであれば、その厳然たる事実を直視して、基礎(Foundation)と本質(Essentials)を徹底的に追求することに尽きる。それこそが、ナヴァルのメッセージなのだろう。


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