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ほんの一部スイカ【毎週ショートショートnote】

熱帯夜。深夜。白夜。

僕は徘徊する。

アスファルトの熱気が僕を蒸している。

汗がじんわりTシャツを濡らす。

濡れたTシャツは僕の体を少しだけ冷やす。

ヒートアイランド現象とはよく言ったものだ。

しかし、その言葉も最近は聞かない。

暑いのが当たり前になり、異常気象も当たり前になった。

ぼうっとしながら僕は白夜の境界線を跨いだ。

気がつくと夜の畑の近くを歩いている。

畑の近くでは熱気が少しだけやわらいだ。

そのとき一陣の風が吹いた。

風は畑から様々な匂いを運んでくる。

懐かしい匂い。安心する匂い。

僕は畑の方を向き、目をつぶり、すうっと深呼吸をした。

土の匂い。草の匂い。きゅうりの匂い、ナスの匂い。

そして、ほんの一部スイカの匂いが漂ってきた。

暗くて何も見えないが、この畑のどこかにはスイカがあるというのはわかる。

スイカの匂いは希望の匂い。

頑張って仕事して、お金を貯めて、スイカを買って、冷やして食べよう。

そして、僕はヒートアイランドの白夜に戻る。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※オチも何もないショートショートです。もはやショートショートとすら言えないのかもです。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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