助手席の異世界転生【毎週ショートショートnote】
「うわ、すごい霧だ」
山道を僕はひとりで運転していた。
じんわりと汗をかいた手でフォグランプを点灯し、霧の中をゆっくり進んだ。
しばらくすると霧の奥から光が見えた。僕は対向車が来たのかと思い、スピードを落としながら、光を注視していた。
すると、その光はきらきらと虹色に輝きだした。
まるで虹色の綿あめのようなそれは、助手席に飛び込んできた。
そして、なぜかほんのりと甘い香りも漂ってきた。
「うわっ」
気がつくと助手席に女の子が座っている。
「君は……」
「私は助手席よ。異世界転生してきたのよ」
「『助手席の異世界転生』で女の子になる前は、この車の助手席だったっていうことなのかい?」
「そうよ」と言って女の子は笑顔を見せた。
その笑顔を最後に僕は気を失った。
*
目覚めると、僕は病院のベッドにいた。
「ここは……」
「ここは病院よ。あなたは霧の中、崖の下に落ちたのよ。助手席は大破する大事故だったわよ」
夢なのか現実なのか、僕はわからなくなっていた。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※無理矢理感満載の不思議な話にしてみました。今日と明日、二日連チャンで忘年会です。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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