十年パンイチ(2作品目)【毎週ショートショートnote】裏お題
シュッ、シュッ、シュッ。
「じいちゃん、寒いよ」
「これから暖かくなるんじゃ。ほら、もっとこすれ」
シュッ、シュッ、シュッ。
「あっ、なんか暖かくなってきたよ」
「そうじゃ。乾布摩擦といってな、身体にいいんじゃ」
ほぼ毎日乾布摩擦の生活が3年続いたある日、じいちゃんが入院した。
「じいちゃんが入院しても僕は乾布摩擦続けるよ」
じいちゃんにそう伝えた日から3ヶ月後じいちゃんは旅立った。
シュッ、シュッ、シュッ。
「もうじいちゃんいないんだから、乾布摩擦はしなくてもいいんだよ」
父が僕に言った。
「乾布摩擦は身体にいいんだよ」
僕は目をつぶり返事をした。
シュッ、シュッ、シュッ。
もうじいちゃんが亡くなってから、十年パンイチで乾布摩擦を続けている。
皮膚が摩擦で熱くなる。摩擦で熱くなった皮膚は赤くなり、それが冷めていくのを感じる。
乾布摩擦をしているとじいちゃんを思い出す。
「じいちゃん……」
僕は目頭が熱くなり涙が出ていた。
シュッ、シュッ、シュッ。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※オチやひねりはないです。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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