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祈願上手【毎週ショートショートnote】

「キィエエエーイ」

外から奇声が聞こえてきた。

「部長、大丈夫ですか?」

「おお、君か。どうした?」

「いや、こっちのセリフですよ。すごい声でしたよ」

「祈願してただけだよ」

「き、祈願ですか?」

「ちょっと試験を受けようと思ってね。もう一回祈願しておくよ」

そう言って部長は、五体投地をしてから、十字を切り、手を合わせて祈り、二礼二拍手をして、「キィエエエーイ」と奇声を上げた。

「部長『祈願上手』ですね」僕は適当にあしらった。

「そうだろう。そうだろう」

無宗教の部長はまんざらでもない顔をしている。

「ところでなんの試験なんですか?」

「『祈願検定試験』だよ。駅の改札を出たら、声をかけられてね。無料で手相見てくれるのかなと思ったら、祈願協会の人だったよ。この試験に受かって祈願士になればモテるって言われたよ。」

「結局、モテるためかい!」

「早く受かりたいなあ。受験料50万円支払ったからね」

「神は信じないのに、その人のことは信じるんかい!」


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※ フィクションになります。もう少し膨らませたかったのですが、字数オーバーになってしまうのでやめておきました。ギャグショートショートは難しいです。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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