見出し画像

ひと夏の人間離れ【毎週ショートショートnote】

朝起きると、窓の外に小さな一羽のスズメがとまっていた。

僕がそのスズメに近づいても、スズメは逃げないばかりか、なにかを伝えようとしているようだ。

「『ひと夏の人間離れ』、ほら来なよ」

スズメがそう言うと、くちばしで窓を叩いた。

すると窓がばっと開いた。

その瞬間、僕は一羽のスズメになっていた。

僕は窓から外へ飛び立った。

澄み渡るどこまでも青い空、草花の緑の香り、草木が擦れ合う風の音。

すべての自然を鋭敏に感じられた。

僕は少し飛ぶのに疲れて、とうもろこし畑の中で休んでいた。

休んでいると太陽が沈んできて、日が暮れてきた。

これ以上は今日は飛べないなと思い、そこを今日の寝床に決めた。

鳥の夜は早い。

辺りが暗くなると僕は眠りに落ちた。

そして、朝起きると、人間に戻っていた。

自分の部屋、いつものベッド、早く起きなさいといういつもの母の声。

あれは夢だったのか、夢と言うには実感がありすぎた。

窓をふと見ると、スズメがコツコツと窓を叩いていた。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※オチが全然思いつかないです。



*この記事は、以下の企画に参加しております。

サポートお願いいたします!執筆活動費にさせていただきます。