秋の空時計【毎週ショートショートnote】
僕はスペースコロニーに降り立った。
コロニーに降り立った僕の頭に一匹のトンボがとまった。
そのトンボを振り払うでもなく、捕まえるでもなく、僕がそのままにしているのを他の人達は目を丸くしてこちらを見ていた。
コロニーでは昼や夜がないため、照明で昼を作っている。
天候も自由に変えられ、植物の生育や地球らしさを出すために時々雨を降らせている。
そして、このコロニーには四季を表現できるという特徴的なシステムがある。
春になれば春一番のような暖かい風が吹き、夏になれば夜寝づらいくらい暑くなる。秋になれば実りの季節でトンボも飛び、冬になればうっすら積もるくらいの雪がふる。
そして、また春が来る。
コロニー内においては時間の管理が大事で、空には巨大なデジタル時計がある。
秋の空にデジタル時計。不釣り合いというか、違和感しかない。
ただ、そんな『秋の空時計』でさえ、なぜか懐かしさを感じるのだ。
やはり僕の中に日本人の血が流れているからなのだろう。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※秋のエモさを出したいときにどうすればよいか。しかもSFを絡めてしまっている。SFを絡めるのをやめると、空に時計を映し出すことができなくなる。時計の描写をやめるか。そうすると、テーマから外れてしまう。そうだ、何か別の秋のエモさを付け足せばよいのだ。そう、ただトンボを出してさえおけば良いのだ。という思考回路で執筆しました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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